「戦後80年 平和のために女性の声を今こそ」開催報告
2025.05.15
2025年4月29日に国連ウィメン日本協会大阪とクレオ大阪中央の共催によるイベント「戦後80年 平和のために女性の声を今こそ」を開催しました。第1部では、朝日新聞大阪本社・社会部記者の花房吾早子さんによる基調講演、第2部では、花房記者と国連ウィメン日本協会大阪会長、三輪敦子とのトークセッションをおこないました。
基調講演では、花房さんが記者としての取材経験をもとに、ジェンダーの視点に立って平和の実現に取り組む事例が紹介されました。例えば、2024年8月に広島で開催されたトークセッション「核問題とジェンダー」では、学生団体「GeNuine」が女性国会議員を招き、核兵器とジェンダーの関係について意見を交わし、「核兵器に関する意思決定の場に女性が少ないこと」をはじめとする、これまで注目されてこなかった視点が共有されました。
「もっと女性や若者の声を、核廃絶の現場に届けたい」と活動を続けるこの団体は、核兵器禁止条約の締約国会議にも参加するなど、国際的にも活発に発言してきており、国内外の平和運動において、注目を集める存在になりつつあると紹介されました。
このほか、パレスチナ連帯デモでは、性的マイノリティやトランスジェンダーへの差別など、紛争下で人権を奪われてきた歴史をもつ人たちの課題が平和の課題と重ね合わせて発信されている様子も報告されました。
第2部のトークセッションでは、三輪会長より、2000年に国連で採択された「女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議1325号」と採択25年目の現状についての報告がありました。
この決議は、①戦時性暴力の根絶と不処罰の防止 ②平和構築・紛争予防・復興における意思決定に女性の声を反映させることの2点を柱としていますが、いずれも十分に実現されていない現状が指摘されました。単に女性の警察官やPKO要員を増やすだけでなく、実質的な政策決定への参加が重要であると強調されました。
あわせて、ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングによる「積極的平和」と「消極的平和」の概念の紹介があり、戦争がない状態を「消極的平和」、暴力や差別がない状態を「積極的平和」と定義し、現在のように構造的な暴力が蔓延し平和が脅かされる社会は、非暴力の文化の構築こそが真の平和実現につながるのではないかと説明されました。
参加者からは、「民間人と兵士を分ける意味は何か」「戦争責任は男性だけのものか」などの問いも投げかけられ、熱のこもった意見交換となりました。
最後に、三輪会長より、「女性の声をもっと政策に反映させなければならない。そのためには、一人ひとりが経験を語り、その声に耳を傾ける場を増やすことが必要」と力強く語られました。
当日は50名を超える方に参加いただき、続く交流会では参加者の活動紹介や意見交換がおこなわれ、和やかな交流の場となりました。
本イベントを通して、平和とジェンダーが結びつくことで、「非暴力のカルチャー」に基づく積極的な平和が広がっていく可能性を実感し、また、戦争・平和・ジェンダー・人権について考えを深める時間となりました。
国連ウィメン日本協会大阪、クレオ大阪中央共催
「戦後80年 平和のために女性の声を今こそ」
【日時】4月29日(火祝)14:30~16:45
【会場】クレオ大阪中央 セミナーホール
【プログラム】
◆基調講演◆
花房吾早子さん(朝日新聞大阪本社 社会部記者)
◆トークセッション◆
花房吾早子さん
三輪敦子(国連ウィメン日本協会大阪会長)
◆交流会◆
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