クレオ大阪中央研究室長 服部 良子(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)
いま、女性活躍の取り組みが国、自治体、企業などで進められています。少子高齢化が進み、日本の労働力を支える女性労働力への期待が高まっています。高齢化で増加する年金や医療費を社会的に支え合うための国民負担は増加しつつあるなか、女性も税や社会保険を負担することが期待されています。家計の側からみれば景気低迷のなかで共働きは必然になってきており、1990年代以降の共働き家族は増加しています。
それでは仕事と家庭の実態をみてみましょう。グラフのように共働き家族の女性が正社員職であってもパートタイム職であっても男性の家事・育児時間はほとんど変わりません。どちらも女性の方が家事・育児時間が長いのです。令和2年時点での生活時間のデータをみると、男性の家事・育児は1時間程度です。これに対して女性の仕事時間は男性より短く、そのぶん家事育児に3〜6時間を費やしています。つまり、家族内の性別役割分担によって、なんとか仕事と家庭をやりくりしている状態で、男性個人・女性個人で見ればワーク・ライフ・バランスは取れていません。もっといえば、女性だけが仕事と家庭の調整を担当しており、男性の働き方は変化していません。働く女性が“なにか納得できない”モヤモヤした感覚をもつのはここに原因があります。
この点、欧米では男性と女性の仕事と家庭の時間配分は日本ほど男女差がなく、女性も男性も仕事と家庭のバランスをとっています。欧米ではすでに1970年代から共働きが拡大しました。家族の男性が失業し女性が働かざるをえない石油ショック後の不況がその理由のひとつでした。また1980年代から少子化が進むなか、税や社会保険料を負担できる働き方を女性もできるように、保育や介護を社会的に支える社会保障制度の整備が進められました
昭和56年の国連女性差別撤廃条約とともにILO156号条約が示されました。ILO156号条約は家族のケアという家族的責任は“男女がともに”受け持つと定めています。日本は育児介護休業法などの国内法の整備をへて、平成7年にILO156号条約を批准しました。ただ日本ではその後も、家族単位の性別役割分担が続いています。女性活躍の実現には、男性のワーク・ライフ・バランスが必須であることが欧米の事例にも表れており、それが男性の育児休業取得が強くすすめられる理由といえるでしょう。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)クレオ大阪ホームページ