クレオ大阪中央研究室長 服部 良子
(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)

更年期でも働き続けられる職場環境をつくるには

特集で取り上げた「更年期」について、データから解説していきます。

更年期症状は男性も経験

少子化で若い世代の働き手の減少が進んでいます。その一方、高齢社会化で働き手の平均年齢は上昇しています。女性活躍の推進としても、中高年世代の女性への働き手としての期待は高まるばかりです。いわゆる更年期世代も社会を担う主要な働き手となっています。それにともない、更年期症状と雇用の状況との相関が注目されるようになりました。

40代以上の働く男女を対象とした調査では、50代前半の女性の約半数が更年期症状を経験しています。同時に、男性も50代では約1割の人が経験しています(図表1)。男女を問わず心身の不具合は生活に影響します。実際に更年期症状と「仕事との両立」を負担に思う人が3割を超え、男女共通した状況を示す調査結果が出ています(図表2)。一方、家事・育児・介護との両立に関して、女性は男性の2倍の割合の人が負担に感じています。

そして女性の3割、男性の4割弱は治療費をかけず放置放任して様子をみるようです。しかし、なかには高額の治療費をかけるケースもあります。実は、高額の治療費用(20万円以上)がかかった割合は、男性は女性より高いのです。

離職や収入減をまねく

更年期症状は働き方にも影響を及ぼします。労働時間や業務内容への負担感のために、更年期症状を現在経験中の女性は非正社員であれば離職する傾向にあります。一方、男性の場合、症状を経験しているのは管理職が多いようです。そのため症状が重い男性は降格や昇進辞退を選択します。

非正社員の場合は、更年期症状が出ていた時期には男女ともに労働時間減や収入の減少が目立ちます。症状が重ければ治療に時間や費用を割くことも避けられなくなり、金銭的な負担となるのです。

更年期に対する理解と支援

過重な仕事負担が更年期症状を促進している傾向もうかがえます。更年期症状を理由とする働き方の調整が許されにくい職場環境が影響しているようです。それを裏付けるように、更年期症状についての職場研修がいま働き盛りの世代から求められています。男女ともに、職場の支援として「症状や対処法について理解できる研修」、国の支援として「更年期症状で休んだ時の収入保障」を希望しています。さらに「休暇を使いやすい職場環境」はもちろん「治療に当たっての経済的支援」が必要な時期にきているといえるでしょう。

進行する高齢社会化のなかで、働き手の中核となる世代である40代から50代にとって、更年期症状は直面する確率がきわめて高い課題です。働き手の減少のなかで、この世代には責任とともに過重な負担もかかりがちです。そのため、更年期に対する社会的理解の普及と職場環境整備の推進はすぐに取り組むべき課題になっています。

2022年7月号 コンテンツ

P.2-4

P.5

P.6-7

P.8

P.9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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