近年、持続可能な社会への関心が高まる中で、「倫理的な」「道徳的な」を意味するエシカルという言葉が注目されるようになりました。特にZ世代(1990年代後半~2010年代前半に生まれた世代)と呼ばれる若い世代は、環境問題や社会的不平等に敏感であり、エシカル志向が高い傾向があるといわれています。男女共同参画社会の実現には、様々な切り口から男女がともに世代を超えて連携していくことが必要不可欠です。これからの社会を担っていくZ世代について知るために、エシカルを切り口に様々な活動を展開されている飯田さんにお話をうかがいました。

飯田 貴将さん

株式会社Lentree取締役COO、エシカルエキスポ発起人/総合プロデューサー、想いを繋ぐ古着屋 from clothes代表。 平成9(1997)年生まれ。近畿大学在学時、コロナの影響下で、ネガティブな方を笑顔にするため、クラウドファンディングで資金を集め、大晦日に花火大会を実施。大学卒業後、ストーリーを売る服屋 from clothesを立ち上げアパレル業界に参入。令和5(2023)年「Z世代100団体で共創するエシカルの祭典 エシカルエキスポ2023」の総合プロデュースを務める。翌年には、大阪・東京の2拠点で開催。過去3回の開催で、総来場者数は3万人を記録。

きっかけは、「面白そう」

 大学時代は、学業よりアルバイトと趣味の釣りに夢中で、あまり真面目とは言えない学生でした。もちろんSDGsやサステナブル※といったことに関心があったわけでもありません。大学卒業と同時に、何か商売を始めたいと考えていた時、子どもの頃、幼心にかっこいいと思って見ていた祖父のオーダースーツのことが頭に浮かびました。そうした服は、高齢者の家のたんすに眠っていて、その方が亡くなったあとには、全部捨てられているということを知り、「もったいない」と感じました。その服を回収して販売できないかと始めたのが、「想いを繋ぐ古着屋 from clothes」です。

面白そうという想いから始めた商売でしたが、着ない服を次の持ち主へ、その服にまつわるストーリーと共に届けるというコンセプトに共感してくれる方も多く、「この事業は社会課題解決につながること」と言ってくれる方もいました。

※サステナブル…英語の「sustain=持続する」と「able=できる」を組み合わせた言葉で、「持続可能な」ということを意味する。

点と点をつないだその先に

 エシカルという言葉は、「倫理的な」「道徳的な」という意味から堅苦しいイメージを持たれがちですが、「もったいない」「おかげさま」といった、日本人が昔から大切にしてきた美徳文化こそ、エシカルの本質に近いと感じます。消費の先にどんな影響があるのかを考えることが、エシカル消費につながる一歩です。

  今、私たちを取り巻く社会課題は複雑に絡み合っていて、環境の課題、ジェンダーの課題、教育の課題、それぞれに抱える課題は、個々のものではなく、強く関連しています。ですが、課題解決に向けてそれぞれが点で活動していて、うまく連携できていないという印象を持っていました。私たち、いわゆるZ世代は、ネットワークをうまく作り、周りと共創しながら役に立ちたいという価値観をもつ傾向があります。点で活動していることを線にして、線で活動していることを面にすることができれば、価値提供の場を作れるのではと考えました。

共創して未来をつくる~Z世代によるエシカルの祭典

 そんな想いを形にするべく、大学などで活動する学生団体と企業をつなぎ、伴走型で開催する展示会「エシカルエキスポ」を立ち上げました。Z世代のアイデアを吸収したい企業と、想いを形にしたい学生団体をマッチングし、それぞれの得意分野を活かしながら合同のプロジェクトを推進しています。エシカルエキスポ2024では、ジェンダー平等をめざす学生団体と月経カップ、サニタリーショーツなど生理用品の製造・販売を行う企業とのコラボレーションによるブース出展もありました。性別や世代に捉われず、ともに連携しながらエシカルな取組を発信する場を提供できたことは成果の一つだと感じます。

  Z世代とひとくくりにされがちですが、世代でくくるのはナンセンスですよね。社会課題と向き合うには、世代を超えてつながることも重要だと思います。それぞれの強みを活かしながら共創すれば、課題解決への動きが加速するのではないでしょうか。

  エシカルエキスポは、次の開催に向けて動き出しました。選択に迷っている人や、挑戦したいと思っている人はぜひ参加してください。ここに来れば、何かヒントが得られるはずです!

エシカルエキスポ2024の様子

2025年1月号 コンテンツ

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表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
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