令和6年度大阪市男女共同参画に関する市民意識調査の結果から
クレオ大阪中央研究室長 服部 良子(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)
社会の多くの分野で男女共同参画の視点を入れた取組や女性の参画、活躍が進んでいます。しかし、「男性は仕事、女性は家庭」のように、性別を理由として役割を固定的に分ける「性別役割分担意識」は根強く残っています。そのため引き続き取組が必要です。
大阪市では、男女共同参画社会の現状をしめす指標の一つとして、「男性は仕事、女性は家庭」という男女の性別役割(以下、性別役割)についての意識を定期的に調査しています(図1)。 最新の令和6年度の調査の結果(速報値)とともに、過去の調査をふりかえってみましょう。
「男性は仕事、女性は家庭」という考え方について反対する比率は、男女ともに過去の20年間で時間の経過と共に増加しています。とくに平成27年度調査から変化が目立ち始めます。性別役割に反対していた男性は、平成16年度調査では41.7%でしたが、令和6年度調査では61.0%に増加しており、女性も54.9%から70.0%に増加しています。大阪市民の性別役割の意識は20年間に大きく変化しました。とくに平成27年度以降は、性別役割に反対する市民は男女とも半数を超えたのです。
「男女の性別役割に反対する理由」に注目して、市民意識の最近の傾向を探ってみましょう。令和元年度と令和6年度との調査結果を比べると、5年間の意識の変化が現れています(図2)。まず「①固定的な男女の役割分担の意識を押し付けるべきではないから」という理由は、令和元年度と令和6年度のいずれも男女ともに最も高い理由となっています。また、次いで男性は「②女性も働いて能力を発揮した方が個人や社会にとって良いと思うから」が令和元年度と令和6年度のいずれも高く、女性は令和6年度からの新しい選択肢「⑦男性も女性も同じくらい家庭を大事にすべきだと思うから」が高くなっています。
注目したいのは、仕事と家庭の両立に関わる理由です。「⑤家事・育児・介護とを両立しながら男女ともに働き続けることは可能だと思うから」という選択肢の結果が、女性は令和元年度では21.9%でしたが、令和6年度には40.1%と約2倍に増加しています。男性も同様に17.1%から32.6%とほぼ倍に増えました。次世代育成支援対策推進法の行動計画を定めることが企業に義務づけられるなど、男性の育休取得の推進とともに育児休業の制度と利用の広がりが進んでいることの影響がうかがえます。
さらに女性の社会的役割をめぐる考え方の変化もありました。「②女性も働いて能力を発揮した方が個人や社会にとって良いと思うから」という理由を選ぶ市民が、男性は約10ポイント、女性は約20ポイント増加し、いずれも50%を超えました。また「③男女平等に反すると思うから」という理由は、男女ともに約30%から約40%に増えました。
こうした意識の変化は社会や経済の在り方を反映しています。そして同時に、国や大阪市の男女共同参画推進のいろいろな政策が、20年余りをかけて市民と市民生活に浸透した結果でもあるでしょう。
国が平成11(1999)年に男女共同参画社会基本法を制定したことにつづき、大阪市でも男女共同参画推進条例が平成14(2002)年に制定されました。それに基づいて男女共同参画基本計画をはじめ、さまざまな男女共同参画政策が総合的に推進されてきました。 この時期には並行して男女雇用機会均等法や育児介護休業法の改正が重ねられて、働き方の改善やワーク・ライフ・バランスが推進されました。さらに平成15(2003)年の次世代育成支援対策推進法や平成27(2015)年の女性活躍推進法が、企業や事業者の行動計画策定を義務づけて育児休業の取得促進や女性の能力発揮を促すことが広がっています。これらの政策展開が「両立は可能と思う」という市民の割合が増えたことの一因ともいえるでしょう。
加えて、大阪市では多様な施策とともに、昭和37(1962)年から設立運営された大阪市立婦人会館、そして、現在の男女共同参画センターという“場”の存在も意識の変化に影響を与えました。学びや交流、そして相談の“場”であるとともに、市民へ“政策を伝える人”に出会える場は、男女共同参画社会の実現にとって大きな効果があったものと考えています。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ