コロナ禍で雇用状況が悪化する中、非正規雇用の割合が高い女性に、雇い止めなどのしわ寄せが及んでいます。そんな中でも、毎月やってくる生理。生理用品を、経済的理由で手に入れることができない女性が増えています。
 問題について考えるために、まずは生理について正しい知識を身につけましょう!痛みには個人差があり、女性同士でも意外と知らないことも。「はてな(疑問)」を解消し、自分や周りの人の身体や健康について、尊重し合える関係をつくりませんか。淀川キリスト教病院の産婦人科医・柴田綾子さんが答えます!

Q1.そもそも生理って、どんなしくみ?

 子宮の中をきれいに掃除して、妊娠する準備をしています。生理前は、子宮の壁の内膜を厚くして受精卵が育つベッドを作ります。妊娠すると内膜に受精卵がくっついて成長し、そこで赤ちゃんが育ちます。妊娠しなかった場合は、ベッド(内膜)はいらなくなるため、生理の血(経血)として子宮から出てきます。これが1ヶ月に1回程度、女性の身体の中で起きているんです。

Q2.女性は人生で何回、生理を経験するの?

個人差はありますが、日本の場合、初めて生理になるのが平均で12歳、終わるのが50歳。その38年間で、約450回経験します(※一度も妊娠・出産しない場合)。生理の持続日数は、1回につき8日以下が正常だと言われています。
 最近は、女性が一生の間に子どもを産む回数が減っているので、生涯に経験する生理の回数が多くなっています。それに伴い、生理に関する病気にかかる機会も増えているんです。

Q3.生理痛って、病気というと大げさ?「月経困難症」という言葉を聞いたことがあるけれど…

 人によって程度は異なりますが、生理痛ってしんどいですよね。月経困難症は生理が原因で身体に痛みが起こり、生活に影響が出てしまうこと。つまり自分自身が困っていたら月経困難症なんです。
 この症状には、2つのタイプがあります。思春期など若い人に多いのが、子宮の収縮を促して生理の血を身体の外に出す物質が過剰に出てしまう場合。子宮がキューと収縮して、強い痛みが起こります。もう1つは、子宮や卵巣の病気が原因で痛みがひどくなっている場合です。いずれも、産婦人科で治療できますので、ご相談ください。

Q4.生理前に気分が不安定になったり、肌荒れしたり… どうしたらいい?

月経前症候群(PMS)の可能性があります。漢方や低用量ピルで改善することができます。ピルというと、避妊のために飲むイメージが強いかもしれませんが、生理痛やPMSの治療薬でもあるんです。
 ピルは、体の中で作られている女性ホルモンと同じような化学物質で、生理の痛みや出血の量を減らす効果があります。生理の日を移動したり、ニキビを改善させたりもできます。吐き気や不正出血といった副作用が出ることがありますが、大抵は自然に治ります。血栓症といって血が固まりやすくなることに注意が必要ですが、喫煙や片頭痛などがなければ、血栓症のリスクは少ないです。
 大事な試験や仕事などに備えて、生理のタイミングを移動させたいという場合、できれば1ヶ月前までに産婦人科に来てくださいね。

ピルを上手につかって肌荒れや生理の日を調整

Q5.生理痛を和らげるために、どんな対策がある?

 痛み止めは、飲んでから効果が出るのに30分ほどかかるので、早めに飲むのがおすすめ。毎回、用法・用量を守れば、体が薬に慣れて効きづらくなるということはありませんよ。
 腹巻きでお腹を温めたり、お風呂でリラックスしたりするのも効果的。普段から、ストレッチやヨガなどの有酸素運動をしていると、生理痛が軽くなるという研究報告もありますよ。

Q6.ダイエットをすると、生理が止まることがあるって本当?

 生理は、身体のエネルギーをたくさん使います。食事制限や、激しい運動をしすぎると、身体が省エネモードになり、生理が止まってしまいます。
 「生理がないなんて、ラッキー」。生理痛がつらい人は、そう思うでしょう。でも、生理中に出る女性ホルモンは、骨を丈夫にしたり、肌をきめ細やかにしたり、認知症を防いだり。身体全体を守っています。女性アスリートの疲労骨折のリスクが高い理由もここから。「生理がこない」ことと「ピルなどで生理を止めている」ことは全く違います。3ヶ月生理がこないときは産婦人科へ相談してください。

Q7.生理中なら避妊具をつけず、性行為をしても大丈夫?

 生理中もコンドームは使ってください。生理だと思っていても不正出血や排卵をしている可能性もあるので、妊娠することもあります。それに、生理中は、子宮にばい菌が入りやすくなっています。ピルを飲んでいても、性感染症予防のために必ず使いましょう。

Q8.生理用品を使うのがもったいない。1日1枚でも足りる?

 生理用ナプキンは出血量によって、昼間は2~3時間に1回、夜間や少ない時は6~8時間に1回交換するのがベスト!節約したい気持ちもわかりますが、我慢しないで。長時間付けていると皮膚に炎症が起きてかゆくなったり、ばい菌が増えて匂いが臭くなったりすることも。男性の中には、「ティッシュやトイレットペーパーで代用できる」と考える人もいるのでは。でも、一時的に血を拭き取れても、吸収力が弱くて下着への漏れを防げません。血の通り道である膣にはふたが付いていないので、力を入れても血は止められません。生理用品は、女性にとって生活必需品なんです。
 コロナ禍で収入が減るなどし、ナプキンやタンポンを買うことができない女性が増えていると言われています。

Q9.ナプキン以外におすすめの生理用品は、どんなものがある?

 最近はナプキンのほか、タンポン、月経カップ、生理用吸水ショーツなどいろいろなグッズが発売されています。ナプキンより高価な商品もありますが、自分に合った生理用品に出会えたら、今より生活が快適になりますよ。

・タンポンや月経カップ
 どちらもナプキンと違い、直接膣に挿入するので、生理中でもお風呂やプールに安心して入れます。下着に線も出ず、付け心地もゴワゴワした感じがありません。月経カップは、1回挿入すると4~8時間前後そのままでOK。洗って使い回せるので経済的です。

・生理用吸水ショーツ
 ナプキンを貼り付けるサニタリーショーツとは違い、下着そのものが水分を吸収します。血が少ない時にはこれだけで十分。洗って何度も使えます。

Q10.男性にこれだけは、知っておいてほしいことは?

 男性は、生理について実感がわかないかもしれません。でも、暮らしや社会のパートナーとして、正しい知識を持っていてほしいです。女性本人がどんなに頑張っても、ホルモンの影響で不調が起きます。生理について揶揄したり、攻撃したりしないでください。避妊や妊娠について、女性任せにせず、男性も一緒に話し合ってください。
 性に関する知識は、生きていく上で必要なライフスキル。正確な知識をゲットして、自分と相手の身体を大切にしていきましょう。

柴田 綾子 さん
淀川キリスト教病院産婦人科医。性に関する悩み相談のほか、性教育情報サイト「命育®」の監修にも携わる。ユーザーの悩みに自動返信するLINE bot「ラッコの妊娠・性感染症相談室」を運営。近著に「患者さんの悩みにズバリ回答! 女性診療エッセンス100」。

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クレオコラム

先進国の女性にも広がる問題
 世界中で問題になっている「生理の貧困」。「生活が困窮することで、生理用品を手に入れることができない状態」をいいます。発展途上国だけでなく、日本を含め、経済格差が広がる先進国でも深刻な問題になっています。

学生の5人に1人が買えない
 特に困っているのが若者たちです。一見普通に暮らしているように見えても、支援が必要な状態というケースもあります。
 生理の貧困問題に取り組む団体「#みんなの生理」が、国内の高校生以上の学生を対象に実施した調査によると、5人に1人が生理用品を手に入れるのに苦労しています。出費を抑えるために、生理用品を交換する頻度を減らした学生も4割近くいたそうです。仕送りやアルバイト代が少なくなり、切りつめるのが生理用品…。衛生環境を後回しにせざるをえない、そんな切実な姿が目に浮かびます。

お金だけじゃない 複雑な理由
 経済的な理由以外にも、家庭環境などが複雑に絡み合っている場合も。家族からネグレクト(育児放棄)を受けていたり家計を心配して言い出せなかったり。たとえ裕福な家庭であっても父親が「生理は汚らしい」と誤解し、生理用品を十分に買い与えてもらえない人もいます。

500円なら大丈夫? いいえ、毎月の負担は大きい!
 ナプキンの購入費は、1か月500円~1000円程度が一般的。それほど高額ではないものの、毎月のこととなると大きな負担です。お金が必要なのは、生理用品だけではありません。生理中に身に付けるサニタリーショーツなどの下着や、痛み止めや低用量ピルの購入費。生理不順などで、産婦人科に通っている人は診療代もかかります。男性には見えていない支出がこんなにもあるんです。
 これまで言えなかった苦しみについて、女性たちが勇気を出して声を上げています。生理の貧困は、ジェンダー格差の問題。「男だからわからない」ではなくまずは恥ずかしがらずに知る・話すことから始めましょう!

DATA

2021年7月号 コンテンツ

P.2-5

P.6

P.7

P.8

P.9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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