クレオ大阪中央研究室長 服部 良子
(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)

ジェンダーと教育
SDGsの視点から

教育分野で改善傾向にあるジェンダー格差

 SDGsの取組がグローバルに進んでいます。男女共同参画政策はエンパワーメントの視点からみれば、ジェンダー平等(目標5)と同時に他の多くのSDGs目標に関係します。とりわけ貧困(目標1)や不平等(目標10)な状態を克服するためには経済成長と雇用(目標8)は不可欠です。つまり、働く能力の基礎を培う教育(目標4)の重要性は強く認識され、より一層改善される必要があります。一般に女性の教育機会が拡大し水準が上昇すると、女性のスキルが上昇し、女性の雇用やビジネス参加の機会が広がります。女性自身が就労によって収入を得ることができれば、男性と比べての貧困や経済的不平等が縮小するのです。しかし、日本においては、男性と同じように大学、大学院に進み教育を受けた女性がいる一方で、ビジネスの分野では女性の活躍は課題が残ったままです。

 ただ、日本の教育のジェンダー格差は半世紀の間に大きく縮小しました。1980年代には雇用機会均等法が制定され、女性に年金を受ける権利を与え女性差別撤廃条約を批准しました。1980年代後半、女性の大学進学率は徐々に上昇し、平成30年には50%を超えました(図1)。昭和50年、男性41%の半分以下(12.7%)であったことを思えば、国連婦人の10年(昭和51〜60年)以降、男女共同参画政策の展開とともに女性の大学進学率は上昇したといえます。

 女性差別撤廃条約の批准のために、教育内容の男女差の是正も進みました。教育の男女平等を保障するために、家庭科男女共修が中学校で平成5年、高校で平成6年から実施されています。  1980年代以前では、女子生徒が家庭科を学ぶ同じ時間に男子生徒は技術を学ぶなど、女性と男性では中学・高校の教育内容に差がありました。こうした教育内容の男女差は、学校関係者や保護者、そして生徒本人に「女性だから文系、男性だから理系」という考え方を無意識のうちに植え付け、結果的に男女の進路選択に影響してきました。

 全体として女性の大学進学率は上昇し、理系を選択する女性も増えました。また、薬学・看護学や教育分野などで女性が半分余りを占めていることは、その職業分野の女性人材の供給が男性と並ぶことを示しています(図2)。女性人材の増加は管理的職務への女性人材の登用につながり、結果として女性の平均的所得水準が上昇します。

アンコンシャス・バイアスにとらわれない選択を

 教育における中高生の進路の選択は、その後の職業生活や所得水準に影響します。つまり生涯のキャリア選択の出発点こそが教育の分野選択なのです。男女の生徒がともにアンコンシャス・バイアスにとらわれず中長期の視点をもって教育や職業生活を考え選択すること、そしてその選択を大人が支援することが個々人の実りある職業生活の実現となります。またそれは同時に社会にとってもSDGsの目標にある貧困克服やジェンダー平等の実現につながるのです。

2022年1月号 コンテンツ

P.2-3

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表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪市男女共同参画のまち創生協会)
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