皆さんの周りには外国人の同僚、友人、家族はいますか?コミュニケーションをとったことはありますか?その国の文化、料理の話をしたことはありますか?  私は大学一年生の時に日本人の男性と結婚した在日アジア人女性たちと出会うまで、異文化に思いを馳せることもなく、異国の地の日本で彼女たちがたくさんの悩みを持っているということも知りませんでした。そんな気づきを得たのは、彼女たちが作ってきてくれた異国の料理の弁当を食べさせてもらったことでした。  初めて食べたエスニック料理。とても刺激的で美味しかったです。その時、たくさんの質問が生まれ、会話をする中で「料理」がその国の文化を表すこと、そして彼女たちが笑顔で会話できる瞬間だということに気がつきました。  生きていく中で、国籍関係なく誰もが食事をします。美味しい、お腹いっぱい、しあわせ、それはみんなの共通の感覚です。料理がつなぐ役割は無限大だと感じました。

多国籍のスタッフが働く食堂

料理がツールとなり自信を取り戻す​

 想像してみてください。もしも自分がタイで突然暮らすことになったらどうでしょうか。言葉もわからない、文字もわからない。日本だとひとりで当たり前にできていたことが、環境が変わった途端にできなくなってしまう。電車に乗れない、行きたい場所に行けない、友だちもいないから相談相手もいない。家に引きこもりがちになり、自信を失ってしまうことも。あれ? 自分ってこんなにも力がなかったかな?ひとりじゃ何にもできないや・・・。
  声は出るけど、「意味をもつ言葉」が出ない。伝えられない、伝わらないことはつらいし、苦しいし、悔しいと思います。そんな気持ちで日本で生活しているアジア人女性たちがいます。
  SALAでは在日アジア人女性たちが日替わりでシェフを務めて母国料理を振る舞いながら生き生きと働いています。彼女たちにとっては当たり前である「母国料理」でも、日本ではそれが本格的なタイ料理、台湾料理などとして大きな価値になります。自分たちの文化を表現し、お客さんが美味しいと喜び、会話が生まれ、対価として代金をいただく。孤独で自信をなくした彼女たちが元気や自信を取り戻すきっかけになっています。そして作る人も食べる人もみんながHAPPYになれる瞬間です。

タイの人気メニュー「カオソーイ」

支援する側ーされる側ではなく「互いが補い合う社会」をめざして

 強い人が弱い人を助ける形だけが支援ではないと考えます。SALAで働く多国籍のスタッフはお互いの強みと弱みを理解し合ってさらけ出せる関係だからこそ、補い合いながら協力することができています。ひとりでできることはちっぽけですが、みんなで支え合うことで、できることがたくさん広がります。  私たちのコンセプトは「Empowerment of all people」。全ての人々がEmpowerment(自信や力をつけること)される社会。国籍も性別も大人も子どもも関係なく、お互いの価値を認め合い、何よりも自分自身の価値を認められるような社会であることを願っています。

フィリピン人アーティストが壁に描いたSALAのコンセプト

神戸アジアン食堂バルSALA代表
黒田 尚子さん

2016年「神戸アジアン食堂バルSALA」を開業。日替わりで、タイ、フィリピン、中国、台湾出身の女性たちが母国の家庭料理を提供する他、留学生とともに地域の子ども食堂を運営。

2022年1月号 コンテンツ

P.2-3

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表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪市男女共同参画のまち創生協会)
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