クレオ大阪中央研究室長 服部 良子
(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)

家事・育児分担とコミュニケーション

 クレオ大阪中央研究室では、令和3年度新型コロナウイルス感染症が仕事や生活に与えた影響やそのなかで困ったことに対するその後の行動や相談などについての調査を行いました。このコラムでは、生活に与えた影響の設問のなかでも、特に家族の家事・育児の役割分担に関して調査結果をご紹介します。

子育て世帯で分担に変化

 今やウィズコロナを前提とした経済活動やライフスタイルが定着しつつあります。教育や仕事でのリモートワークも導入されました。こうした家族の在宅時間の変化は、食事準備など家事時間や育児時間を増加させており、この調査でも男女の家事・育児などの分担に影響が予想されました。
  感染症拡大をきっかけとした家事・育児の家族間の役割分担の変化は全体の15%みられます。その変化が1年後も継続しているのは11%でした。やはり子育て世帯の変化の継続が30%と際立ちます。一部ではあっても家事や育児の役割分担の変化は確実に若い世代で進んでいることがわかります。(図1)

満足度に男女差

 こうした状況はどのように受け止められているでしょうか。同調査によると、子育て世帯の男性の約8割、女性の約7割が満足しています。ただ、家事について「非常に満足」している男性が2割以上いるのに対して、女性は1割以下しかいません。(図2)
 コロナ以前から家事や育児の男女の役割分担には男女差がありました。共働き世帯では妻の家事・育児・介護時間は夫の4倍以上(1週間で妻370分に対して夫は84分。出典:平成28年 社会生活基本調査(総務省))というデータはよく知られています。女性と男性は同じように社会で働きながらも、結婚出産で家事・育児との両立が女性にはより強く求められる現実があります。

コミュニケーションがカギ

 先ほど述べた家族間の家事分担に関する満足度で、不満と回答した人のうち、家族間のコミュニケーション不足を自覚している人は43.5%でした(図3)。同じ項目を満足と回答した人は19.6%でした。自由記述でみると「できる人がやればよい」という回答がみられる一方で、できる人あるいは気づいた人がやった結果、自分に負担が偏っていることに不満を感じる内容も見られます。
 昭和60年の男女雇用機会均等法や平成27年の女性活躍推進法の制定とともに女性も働き続ける価値観が広まりつつあります。ただその一方で、共働きの場合でも多くの女性が男性よりも家事や育児を負担している現実があることが調査でもわかります。こうした状況に対処する方法の一つは、まずは家事育児の担当をめぐる「会話」や「コミュニケーション」かもしれません。
 どのような分担をするかは、年齢構成や仕事・生活状況に応じて、それぞれの家族でそれぞれのやり方があるでしょう。家事や育児について、家族みんなが自分事として関わり、コミュニケーションを重ねることが生活の男女共同参画に影響することが示された調査だといえるでしょう

※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。

2022年5月号 コンテンツ

P.2-3

P.4

P.5

P.6-7

P.8

P.9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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