「2人で働き、2人で子育てする」という考え方が定着しつつあるなど、仕事と育児の両立に関する若い男女の価値観は変わりつつあります。子育て中の部下や同僚を理解し、支援するには、基礎的な知識が求められています。仕事と子育ての両立の課題に対する理解度が上がり、意識変革のアクションにつなげるきっかけとなればと思います。
株式会社マザーネット代表取締役社長
上田 理恵子さん
●「子どもを保育所に入れるため保護者が行う活動」のことを( ① )という。 待機児童が多い自治体では、希望する認可保育所に子どもを入れられるように、事前に入念な情報収集・準備を行うことが必須となっています。
●0~2歳児向けの保育施設に子どもを預ける保護者が、3歳以降の預け先探しに苦労する問題を( ② )という。待機児童対策として、0~2歳児のみが対象の保育施設が増設された結果、3歳以降の受け皿不足が起こり、もう一度保育所探しに奔走しなければならない保護者が増えています。
●子育てしながら働く女性が、子育てと仕事の両立をしていく中で昇進や昇給などの機会が難しくなるキャリアコースを( ③ )と言います。
●共働き家庭において、子どもが保育所から小学校に上がる際、直面する社会的な問題を( ④ )といいます。保育所では、延長保育があるところも多く、ある程度遅い時間まで子どもを預かってもらえます。しかし、公的な学童保育では通常18時で終わってしまうところも多く、保育所よりも預かり時間が短くなってしまい、子どもは、家で一人で過ごすことになります。保護者は安全面でも精神面でも心配がつきません。
●学童保育が小学3年生までのところも多く、小学4年生からは放課後や長期休暇中の子どもの居場所の確保が問題になります。これを( ⑤ )と言います。より難易度が高くなる学習面のサポートや、そろそろ反抗期を迎えつつある子どもの精神的なサポートに親が関わる必要が出てきます。
●子育てと親の介護が同時期に発生する状態のことを( ⑥ )といいます。 女性の晩婚化により出産年齢が高齢化し、兄弟数の減少や親戚とのネットワークが希薄化し続けている現代では、そのような世帯の増加が予測されています。
(回答) ①保活 ②3歳の壁 ③マミートラック ④小1の壁 ⑤小4の壁 ⑥ダブルケア
いかがでしたでしょうか。常にアンテナを張り、新しい情報を入手するように心がけてください。
アンコンシャス・バイアスとは、「自分自身は気づいていない、無意識のものの見方やとらえ方の歪みや偏り」をさします。日本では平成25年ごろから、研究者やメディアの間で取り上げられるようになりました。私たちの身近には、まだまだ根強い性別役割分担意識が残っています。
□女性が家事、育児を担うべきである□男性は子育てよりも仕事を優先すべきである□小さな子どものいる女性は、仕事よりも子育てを大切にした方がよい□男性は女性に優しくするべきである…など
たとえば、子どもが急に熱を出して、保育所から連絡があり、急きょ帰宅することになった女性社員に「いいよ、早く帰って。母親は一人しかいないんだから」と周囲が声をかけることがよくあります。言われた女性はどうでしょうか。「母親は一人しかいない」という言葉から、「子どもが病気の時は、母親がそばにいて看病するもの」、「小さな子どものいる女性は、仕事よりも子育てを優先すべき」というメッセージを受け取り、傷ついたり、罪悪感を感じることもあるのです。この話を男性経営者の方にすると、「だって、男性の本性として、女性の仕事量を減らさなければという気持ちがあるから、そう声をかけたんだよ。優しい気持ちからなんだ」と言われたことがあります。優しい気持ちは、とてもうれしいものです。しかし、優しい言葉により、職場で自分が必要とされているという実感が持てず、モチベーションが下がってしまうこともあるのです。これを「優しさの勘違い」という表現をすることがあります。
アンコンシャス・バイアスは、女性を含めた多様な人材をマネジメントする際に、大きな障壁となることがあります。まずは自分自身の持つアンコンシャス・バイアスに気づくことから始めてみてはいかがでしょうか。
仕事と子育てを両立するためには、本人が積極的に対応することが必要ですが、それだけでは乗り越えられないこともあり、上司を含めた職場の理解と支援が必要となってきます。
部下はそれぞれのステージで、抱える悩みも変わります。また、結婚、出産や育児を経験して、キャリアや働き方に対する考え方が変わることもあります。日頃からコミュニケーションを図り、部下の状況を正しく把握し、臨機応変に接することが求められます。
育児中の職員にとって、子どもの病気で急に休むということは、避けられないことです。たとえば、子どもの病気で休むという連絡が入った時、心から「お大事に」と伝えましょう。そうした中から、信頼関係が強まり、仕事においても相乗効果が得られるでしょう。
子育てしながら働く部下について、働き方に制限があるという面だけをとらえるのではなく、5年後10年後に組織の中核となる人材と位置づけ、上司は育成計画を立て、本人と共有することが大切です。
性別役割分担意識にとらわれず、自分たち家族にとってより良い生き方を選択する人たちが増えてきています。仕事と子育てを両立しながら、しなやかに活躍しているロールモデルが着実に増えていくことで、アンコンシャス・バイアスが払拭されればと思っています。
昭和36年生まれ。大阪市立大学卒業後、空調メーカーに17年間勤務。仕事と子育ての両立に悩んだ経験から平成13年ワーキングマザーを総合的に支援する株式会社マザーネットを創業。マザーケアサービスを中心に、保活コンシェルジュサービス、育児休業に関する社内セミナー等、きめ細かいサービスを提供。関西経済同友会「女性活躍委員会」共同委員長。著書「女性活躍が企業価値を高める~子育て中の部下を持つ経営者・上司のためのマニュアル」(神戸新聞総合出版センター)はクレオ大阪の情報・図書コーナーでも所蔵。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ