親子が未来に希望を抱けるように

認定NPO法人
女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ
WACCAー女性や子どもの支援・仲間づくり・居場所

代表理事
正井 禮子さん
民間シェルター「ともだちの家」を運営。2004年の開設以来、これまでに377組の被害者を保護してきた。困難を抱える女性や、シングルマザーと子どもたちのための「WACCA」では、居場所づくりや学習支援・就労サポートなどに取り組む。

DV被害者支援の現場から

 暴力を受けた被害者が緊急一時的に避難できる「民間シェルター」について知っていますか? 内閣府男女共同参画局によると、全国で124の団体(2020年11月1日時点)が運営し、被害者の一時保護や、自立に向けた支援などを行っています。今回は、その団体の1つである「ウィメンズネットこうべ」の取り組みを紹介します。

切れ目のない支援で傷ついた心の回復を

 暴力をふるう夫から逃れて離婚したら、やっと幸せになれる―。実はそう簡単ではありません。DVを受けた女性は、住まいも仕事も、全てを捨ててシェルターに逃れてきます。

 「暴力か貧困しか選べないの?」「私は社会に必要ない人間なんだ」。そんな風に自尊感情をなくした方が、傷ついた心を回復させるには長い時間がかかります。貧困状態で孤立していると、子どもへの虐待のリスクも高まります。そのためシェルターを退所後も、私たちは相談や見守りを続け、生活再建をサポートしています。

 また、保証人や緊急連絡先がなく、家探しが難しい方のために、不動産屋や生活保護の申請窓口への同行支援なども行っています。コロナ禍では、経済的不安や在宅ワークでのストレスが家族に向かうなど、DVや虐待の相談が増加。シェルターも満室が続いています。安心できる住まいを見つけるには、中長期的な支援が欠かせません。

子どもは"忘れられた被害者"

 親がDVを受ける姿を見た子どもたちは、大人と同じく悲しみ、傷ついています(※)。ある日、父親の暴力から逃れるためにシェルターに来た小学生の男の子が、引っ越しをすることに。でも、その子にとって学校だけが幸せを感じられる居場所。妹を殴り、転校への不安をぶつけていました。そこで、お母さんには席を外してもらい、スタッフが1対1で男の子と向き合いました。

 「大変だったね。よく頑張ったね」。そう声をかけると、それまで反抗的だった男の子は堰を切ったように泣き出しました。時間をかけて話を聞き、「腹が立つことがあったら言葉で伝えよう」と約束。男の子がほんの少しでも前向きな気持ちになり、転校先で居場所を見つけてくれていることを願います。

 子どもたちは、”忘れられた被害者”です。支援現場だけでなく、政治や教育、社会全体で、「暴力で問題解決しようとしてはいけない」というメッセージを発信し続けること。それが、DVや虐待による負の連鎖を断ち、子どもたちが未来に希望をもてる世の中につながると信じています。

※子どもの前でのDVや、ののしり合いの夫婦げんかを「面前DV」と言い、子どもに対する心理的虐待にあたります。

シェルターのリビング。利用者が安心できる雰囲気

シングルマザーの住まい探しの相談風景

2021年10月号 コンテンツ

P.2-3

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表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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