クレオ大阪中央研究室長 服部 良子(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)
ひとり親家庭支援の窓口ワンストップ化が広がっています
「全国ひとり親世帯等調査」(2016年)による推計では、母子世帯数は約123万世帯、父子世帯数は約19万世帯です。そして、ひとり親家庭となった理由は母子、父子ともに約8割が離婚です(資料)。ひとり親家庭では、就業と収入の面で、母子家庭と父子家庭の差が目立ちます(資料)。働き方の男女差がそのまま表れ、母子家庭の就業は約半分がパート・アルバイト、父子家庭は7割が正社員です。その結果は収入にもはっきりと表れます。母子家庭の平均年間収入は父子家庭の半分程度です。
日本人の平均給与が433万円(令和2年国税庁の民間給与実態統計調査)であることを考慮すると、父子家庭はまだその水準に近いですが、母子家庭の就労収入200万円は低いと言わざるを得ません。18歳未満の子どもがいる家庭全体の平均所得の651万円で見ても、母子家庭は225万円と約3分の1になります(2019年国民生活基礎調査結果)。生活費の少なさは教育費や子どものケアに支障が生じます。さらに、国際的なひとり親の貧困率をOECD諸国で見ると日本は欧米諸国より高いのです。また養育費の支払いや面会交流などの取り決めをしている比率も低いのが現状です。つまり、ひとり親家庭支援は子どもの貧困問題とも関わる国の貧困対策の主要なもののひとつです。
ひとり親家庭への支援は社会の課題として、母子及び父子並びに寡婦福祉法(2012、2014年改正)や児童扶養手当法改正により進められています。現在、国や自治体はひとり親家庭の自立支援策として、①子育て・生活支援、②就業支援、③養育費確保支援、④経済的支援(給付や貸付)を行っています。さらには、児童扶養手当の加算額や支払い回数の変更、障害年金など公的年金の併給調整なども進められました。ひとり親家庭などを支援する「すくすくサポート・プロジェクト」として自治体の窓口のワンストップ化や生活・学習支援事業の創設が広がっています。
大阪市もひとり親家庭等自立促進計画を策定し様々な支援策を整えています。この計画は、新しく整えられた施策を示すとともに、従来から展開された多様な支援策をひとり親家庭支援という視点で見直し、“発信する”という施策と考えるとよいでしょう。ひとり親家庭支援の窓口がワンストップ化されることで、すでにある施策がひとり親家庭にとって有効となり、市民サービスを必要とする人へつなぐ役割を果たす意味があります。
就労や子育ての条件から貧困に近づきがちとなるひとり親家庭の支援は、SDGsにある17目標のうち貧困や労働、そしてジェンダーなどに関わるものとしても国や自治体がいま推進しているのです。
大阪市では「大阪市ひとり親家庭等自立促進計画」を策定し、ひとり親家庭のみなさんが安心して子育てをしながら働き、こどもたちがすこやかに育つことができるように支援をすすめています。
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発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ