クレオ大阪中央研究室長 服部 良子
(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)

少子化への対策は仕事も子育ても「男女共同参画」

前号では少子社会の現状と対策を未婚化と晩婚化から読み解きました。今号は、家族の姿の変化と年齢層の割合の変化のデータを交えて、少子化への対策について解説します。

家族の姿の変化

 日本における家族の姿の変化を見ると、1人暮らしの比率はますます増加しています(図1)。統計でみると、昭和55年(1980年)には19.8%だった単独世帯は、令和2年(2020年)では38.0%とその割合が2倍近く増加しています。その一方で、子どもがいる世帯は減っています。前号で未婚率の上昇について述べましたが、日本は婚外子比率が世界でも低い国の一つ(3%以下)であるため、日本での未婚率の上昇はそのまま出生数の減少を意味します。昭和55年(1980年)には42.1%であった「夫婦と子ども」世帯は令和2年には25.0%であり、「ひとり親と子ども」と「3世代等」を合わせても41.7%です。子育て家族がこれだけ少ないことで、子育ての実感や負担を共有しにくい社会になっているといえるでしょう。

図1

家族の姿の変化

出典:令和4年度男女共同参画白書
備考
1.総務省「国勢調査」より作成
2.一般世帯に占める比率。施設等に入っている人は含まれない。「3世代等」は、親族のみの世帯のうちの核家族以外の世帯と、非親族を含む世帯の合算。
3.「子」とは親族ないの最も若い「夫婦」からみた「子」にあたる続柄の世帯員であり、成人を含む。

「人口ピラミッド」からみる人口の未来図

 男女別に年齢ごとの人口を表したグラフを人口ピラミッドといいます(図2)。20歳以下の人口も人口比率も時代とともに減少しているのがわかります。また、65歳以上の高齢者は他の世代と比べると割合が増加しているのに対し、20〜65歳の働く世代の人口が急速に減っています。出生数の減少により、日本の労働力の減少や、国民総生産として示される社会経済活動の縮小がもたらされています。特に働き手の減少は税金や社会保険料を負担する国民の減少でもあります。今後の人口の減少傾向を推計すると、現在の社会保障制度の負担と給付の制度を変更せざるを得ない未来図が描かれるのです。

図2

人口ピラミッドの変化 (この図では、ピラミッドの片側に男女合計の人口を表示しています。)

出典:令和4年厚生労働白書
資料:実績値(1990年、2020年)は総務省統計局「国勢調査」、推計値(2025年、2040年、2065年)は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)により厚生労働省政策統括官付政策統括室において作成。(注) 2020年の実績値は、図に掲載している推計値の後に公表されたものであることに留意が必要である。

未来を変える 未来を描く

 もしこの未来図、つまり少子化傾向を止めることを望むのであれば、早急に対応が必要です。まず、結婚できる働き方を実現すること、特に所得が低いとされる非正規雇用労働対策です。また、子育て費用の支援の充実は、子育て中の家族だけでなく、これから家族をつくるであろう若い世代からも求められています。さらに、女性だけでなく男性からも、子育てしながらでも働きやすい職場や社会制度の整備を求める声があがっています。  もちろん、こうした政策の実現には財源の課題があります。財源である社会保険料や税などの国民負担は、人々が働くことによる社会の富として生み出されるものであり、働くことが社会的な子育て支援の源となります。したがって、女性が働き続けやすいことに加えて、男女ともに子育てと仕事を両立できる政策が長期的には財源問題の解決にもつながります。これは1990年代から欧州、とくに北欧で実践されてきた政策です。「仕事も子育ても男女共同参画」という目標は、はっきりしているといえます。  男女が働きながら次の世代を育むための条件整備が、一時的短期的政策ではなく長期の視点をもって明確な目標へ向かって進んでいるといえるでしょう。“いま”の子育てにまつわる社会経済のありようが、日本の未来のかたちを決めることになるのです。

2023年7月号 コンテンツ

P.2-5

P.6-7

P.8

P.9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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