特 集

2025大阪・関西万博
女性が活躍する未来社会に向けて

 2025大阪・関西万博は、2025(令和7)年4月13日から開催されます。日本での大規模な万博としては2005(平成17)年の愛知万博以来20年ぶり、大阪では55年ぶりとなる開催です。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、会期中は様々な展示やイベントが行われる予定です。また、2020(令和2)年のドバイ万博に続き、女性活躍推進をテーマにしたウーマンズ パビリオン(※1)の出展が決まっています。万博開催は女性活躍推進の取り組みがさらに加速するチャンスです。開催地である大阪で活躍する3人の女性たちに、万博開催にかける期待と、日本の女性活躍推進の現状や未来への想いについてインタビューしました。

 

※1 内閣府、経済産業省、リシュモン ジャパン株式会社カルティエ、博覧会協会が出展するパビリオン

働く女性の視点から

SDGs達成に向けて“人と繋がる”チャンス

赤松 真弥さん

サクヤワーキングコミュニティ代表
株式会社 大林組 理事 夢洲開発推進本部 大阪関西万博・IR室 部長
1989(平成元)年入社。開発部門を経て2000(平成12)年にPFI事業(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)を専門的に扱う部署の立ち上げに伴い異動。20年にわたり入札提案業務を担当。2021(令和3)年に大阪関西万博・IR室に異動。パビリオンの建設推進に従事している。2017(平成29)年第2回大阪サクヤヒメ表彰(※2)活躍賞を受賞。

※2 大阪サクヤヒメ表彰…企業活動や文化的活動で活躍し、後進のロールモデルとなる女性リーダーを表彰する制度。

 2025年大阪・関西万博は、一人ひとりが自らの生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮し、持続可能な社会に向けて行動する契機と捉えています。私自身も建設におけるサステナビリティ(※3)の実現とともに、女性活躍やDEI(※4)などのウェルビーイング(※5)の実現に向けて行動しています。
 カルティエが手がけるウーマンズ パビリオンでは建設におけるCO2排出量を削減する様々なカーボンマネジメントに取り組んでいます。なかでもドバイ万博日本館で使用したファサード資材(※6)をリユースする取組みは、建築家永山祐子さんの発案による画期的な試みです。ドバイ万博から繋がる取組みを、女性の貢献に光を当てる「ウーマンズ パビリオン」で実現できることを意義深く感じています。また、障がいのあるアーティストとコラボしたサイトウエア製作にも取り組んでいます。
 万博という国籍、年齢、性別、障がいの有無によらず多様な人々が集う場は、自分と同じ課題や意識を持つ人達と繋がる貴重な機会です。出展者だけでなく一般参加者が活動できるスペースも予定されています。私たち一人ひとりが、したいこと、できること、しなければならないことを考え、それぞれの課題解決、SDGs達成に向けて他者と繋がって実行することができます。まずは参加してみるという姿勢が大切です。

 私自身は「働き続けて自立することが大切」と考え、周囲の助けを得ながら充実した社会生活を続けています。2017(平成29)年に大阪サクヤヒメ表彰活躍賞の受賞をきっかけに、様々な社外の人と交流する中で、建設業が「女性が働きにくい業界」と捉えられ、「女性が働き続けることが珍しい」と思われていることに気が付きました。確かに建設業は女性が少ない職場で、孤立や不安を解消しにくい現実があります。
 そこで、大阪サクヤヒメ受賞者の有志とともに、働く女性の働き続ける力になることを目的に「サクヤワーキングコミュニティ」を設立しました。家庭・会社以外の繋がりをもつことの効果を実感し、同じ問題意識を持つ幹事メンバーとともに大林組大阪本店の女性社員ネットワーク「NOON」を設立しました。これらのコミュニティでSDGs達成に向けた活動をしています。ウーマンズ パビリオンの工事事務所は女性社員が多数を占める貴重な試みです。また、ウーマンズ パビリオン内に設置される「WA」スペースでの催事参加にも取り組んでいます。主体性をもって周囲のために何か行動したいという方はサクヤワーキングコミュニティに参加いただければ嬉しいです。

※3 サステナビリティ…環境や経済等に配慮した活動を行うことで、社会全体を長期的に持続させていこうという考え方。日本語で「持続可能性」。
※4 DEI…Diversity,Equity&Inclusion(多様性、公平性、包括性)の略。多様な人材それぞれの個性が最大限に活きることがより高い価値創出につながるという考え方。
※5 ウェルビーイング…身体的、精神的に健康な状態であるだけでなく、社会的、経済的に良好で満たされている状態にあること。
※6 ファサード資材…ファサードとは建築用語で建物を正面から見たときの外観のことであり、屋根や外壁などに使われる資材のこと。

女性リーダーの視点から

大阪から日本、そして世界へ

荒金 雅子さん

株式会社クオリア代表取締役、2019 W20(Women20)運営委員
都市計画コンサルタント会社、NPO法人理事、会社経営等を経て株式会社クオリアを設立、代表取締役に就任。1996(平成8)年に、米国の企業視察をきっかけにダイバーシティ&インクルージョンに出会う。以降一貫して組織のD&I推進や女性の能力開発などのコンサルティングに取り組む。2019(平成31-令和元)年G20大阪の公式エンゲージメントグループW20(Women20)の運営委員会委員を務める。

 「2025大阪・関西万博をWomen’s Expoに。大阪から日本を、そして世界をよりよい社会に変えていきましょう」。これは、女性初の経団連役員で、2019(平成31-令和元)年W20(※1)運営委員会共同代表の故吉田晴乃さんの言葉です。この言葉を聞いたとき、万博は、「未来を見せる場」、そして「世界と女性がつながる場」であると感じました。
 日本の男女共同参画の現状は、世界から見て大きく立ち遅れていますが、過去10年を振り返ると、女性たちの動きは加速しています。2025年には、ジェンダー平等達成に向けた変化の兆しが顕在化してほしいと思っています。
 吉田さんの遺志を引き継ぎ、万博に世界中で活躍する女性たちが集う「Women’s EXPO 2025」(※2)を開催することをめざして2020(令和2)年より仲間と活動を続けています。2025大阪・関西万博では、万博会場での出会いはもちろん、会場を飛び出しデジタルでもつながりが広がることに期待しています。女性活躍の推進には、女性たちの繋がりはもちろん、後押しする男性たちの存在も不可欠です。近年では、30%Club Japan(※3)の活動をはじめ、女性活躍に取り組む男性リーダーたちの存在感が心強いです。
 万博は、未来を体感するとともに、女性の活躍を表現する場でもあると思います。若い世代や子どもたちがその未来を見て、こんな社会で暮らしたい、と夢や希望をもって一歩を踏み出す場にしたいと考えています。

※1 W20…G20のエンゲージメントグループのひとつであり、 女性に関する政策提言をG20に向けて行う組織体。
※2 Women’s EXPO 2025…故吉田晴乃さんの想いに共感した有志による団体「吉田晴乃記念実行委員会」による活動。TEAM EXPO2025共創チャレンジに登録。
※3 30%Club Japan…企業の重要意識決定機関に占める女性割合向上を目的とした世界的キャンペーン。日本ではTOPIX100の取締役会に占める女性割合を2030年をめどに30%とすることを目標に2019(平成31-令和元)年より活動を開始。

NPO代表の視点から

大阪で学び、世界への“おみやげ”にしてもらう

村木 真紀さん

特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ代表
1974(昭和49)年茨城県生まれ。社会保険労務士。京都大学 総合人間学部 卒業。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て現職。LGBTQ当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTQに関する調査研究、社会教育活動を行っている。大手企業、行政等で講演実績多数。

 先日、万博のカナダ館のコンセプト発表にお招きいただき、お話を伺う機会があったのですが、発表する経済担当の大臣が私と同年代位の女性でした。女性が意思決定の場で活躍されている姿がとても素敵で、今の日本も意識して変わっていくべきだと思いました。若い人・女性の活躍が可視化された社会であるべきですし、意思決定権をもつ中枢の人がスーツを着た男性たちばかりというイメージは払拭したいですよね。
 万博の開催となると、日本全国から小中学生が大阪を訪れるでしょう。私たちが運営しているプライドセンター大阪や、クレオ大阪など、様々な施設にも学習旅行先として立ち寄っていただければと思います。万博は、大阪市が全国・全世界の皆さんの学びの場になる機会です。日本はLGBTQ(※1)に関する法整備はまだまだですが、当事者が登場・活躍するアニメやドラマなどのコンテンツも充実していて、それに憧れて日本に来られる海外の方も多いと思います。また、日本に来る留学生で、LGBTQの方もいらっしゃいます。そういった方たちのために、私たちもより多くのサポートができるように取組みを進めています。
 万博のテーマの「いのち輝く未来社会」の実現に向けて、ジェンダー平等はもちろん、すべての人々が男女の区別なく学べるということも大切だと思います。特に、女性や若い世代の方に取り組んでいただきたいですし、世界中から人々が大阪を訪れる万博は、地元に学びや意見を持ち帰っていただく良い機会なのではないのでしょうか。

※1 LGBTQ…レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアあるいはクエスチョニングの頭文字をとった言葉で性的マイノリティの人たち

地域活動の視点から

EXPO'70から55年
~新たなステージに向かってバトンをつなぐ~

前田 葉子さん

大阪市地域女性団体協議会 会長

 1970(昭和45)年の大阪万博は「人類の進歩と調和」をテーマに掲げ、日本が発展していく途中の斬新な技術を目にする、という印象を持ちました。その当時、私は20代後半でしたが、会社が茨木市にあり会場まで徒歩圏内でしたので、仕事終了後、何度か行く機会がありました。今回の万博は進歩の先にある、世界のあらゆる課題解決や、よりよい未来のための取組みを考える機会を共有する場であると思います。
 また、2030年のSDGs達成に向けての取組みの一つとして、捉えることもできます。昨年、大阪公立大学のアクアポニックス(※1)の話をお聞きして、SDGsの取組みに適ったこの技術に感動し、パビリオン建設のための寄付をさせていただきました。時代の背景が変化し、前回の大阪万博から今回へ、さらに未来へと、新たなステージに向かって共に考えてよりよい未来へとつないでいきたいと思います。
 昭和45年当時は「大阪市地域女性団体協議会」という団体は全く知らず仕事一筋でしたが、今は会長になり地域女性会の活動を担っている立場に、一人の女性としての歩みを感じます。職場において「女性はお茶くみ、電話取り、20代後半までには結婚して退職」というイメージで捉えられていた時代から思うと、女性の立場も随分変化してきました。しかし、まだまだ男女同権には至っておらず、家庭内でのワーク・ライフ・バランスの充実、地域において女性も決定権のある地位につき、またその力を発揮できるような環境を整備するなど改善の余地があります。万博協会理事の中にも女性理事さんが沢山在籍されていると思いますが(※2)、大いにアピールしていただきたいと思います。
 大阪市地域女性団体協議会としても男女共同参画という観点から、地域において、女性会会員が活躍できる基盤づくりに取組んでおりますが、今回の万博が大阪が開催地であるという利点から世界に向けて大きな発信ができるというチャンスを利用し、大阪の女性のパワーを発揮し、頑張っている姿を見てもらいたいと思います。
 また、この万博には、世界中の老若男女、あらゆる人々が参加し、交流しながら新未来にチャレンジして、バトンをつなぐ場となるよう期待いたします。 「いっしょに、いこな!」

※1 アクアポニックス…水産養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を組み合わせた循環型農業。魚のフンなどを微生物が分解し、植物が養分として吸収する仕組みで、「大阪ヘルスケアパビリオン」前に展示物が設置される予定。
※2 万博協会では現在、理事33名のうち女性は14名で、4割を占める。

大阪市地域女性団体協議会

戦後間もない1949(昭和24)年12月に結成。学習を活動の基本としながら、女性の教養と地位向上をめざして活動しており、社会教育活動の推進、平和・平等と地域環境保全などに取り組んでいる。2021(令和3)年に策定された「大阪市男女共同参画基本計画~第3次大阪市男女きらめき計画~」に沿って、大阪市と協力して地域で男女共同参画社会の実現をめざしている。

国際婦人年に向かう女性たちの時代 ~大阪万博のころ~

大阪市婦人団体協議会「婦人大阪」第91号(昭和45年4月8日発行)

 1970(昭和45)年の万博には、77か国が参加し、183日間で約6,422万人もの人が訪れました。当時は外国の方を見かけることすら珍しい時代で、会場でさまざまな国の方を見かけては「どんな国の方なんだろう」と思いを巡らせたり、月の石を見るために何時間も並んだりと、初めて出会う人やものに対する期待感が溢れていたといいます。
 お祭り広場では、大阪市婦人団体協議会(現大阪市地域女性団体協議会)の皆さんが揃いの浴衣を着て万博音頭と大阪音頭を踊りました。
 1975(昭和50)年の「国際婦人年」を前にしたこの時期は、世界的にみても男女共同参画社会の形成の草創期であるとされ、同時期に開催された大阪万博は女性の地位向上の流れが大きく加速するタイミングでのイベントであったといえます。今回の万博は、どんな契機となるでしょうか。

2024年1月号 コンテンツ

P.2-4

P.5

P.6

P.7

P.8-9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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