専門分野:社会政策、 ワーク・ライフ・バランス問題
DV(ドメスティック・バイオレンス)について明確な定義はありませんが、日本では「配偶者やパートナー等、親密な関係にある人や親密な関係にあった人からの暴力」という意味で使用されることが多いです。一方、同居していない交際相手からの暴力をデートDVと言い、どちらも相手を支配しようとする行為です。
令和5(2023)年に内閣府が行った調査では、交際経験がある人の18.0%、性別でみると女性の22.7%、男性の12.0%は交際相手から暴力を受けたことがあるとしています(図1)。
文部科学省では「生命(いのち)の安全教育」の中学生向け教材としてデートDVを扱うことなど、全国の学校において加害者にも被害者にもならない教育を進めています。令和7(2025)年の女性版骨太の方針では、内閣府はもちろん厚生労働省や法務省、そして警察庁など複数省庁の課題として、個人の尊厳が守られ、安心・安全が確保される社会の実現のために配偶者等への暴力や性犯罪への対策の強化が指摘されています。
しかし、大阪市の市民意識調査の結果によると、「デートDV」という言葉について「内容を知っている」または「聞いたことがある」と答えた方の数値は、20代〜40代で50%強、全体でも43.7%と半数近くの方が認知されてきたものの、年齢が高くなるにつれて、認知度は低下し、70代では30%に満たない数値となっています(図2)。
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、配偶者暴力防止法)ができるまでは、夫婦関係における暴力については民事不介入等の考えから事件化されることは少なく、見過ごされることが数多くありました。
しかし、現代の日本は20世紀から大きく変化し、配偶者暴力防止法だけでなく、ストーカー行為等の規制等に関する法律も制定されています。家族関係や好意の感情が出発点ではあっても、DV、デートDVもストーカー行為も暴力であり、人間の権利を侵害する行為とされています。DVやデートDVは親密な相手や、親密であった相手を支配しようとする行為であり、ストーカー行為は恋愛感情や好意が満たされなかったことによる怨恨の感情から、特定の人やその家族など密接な関係のある人に対してつきまとったりする行為になります。デートDVがエスカレートすると、ストーカー行為につながる恐れもあるのです。
こうしたDV、デートDVやストーカー行為の理解には、人と人の「関係」についての意識や考え方に立ち戻ることが大切です。女性よりも稼ぎのある男性は優位な振る舞いが許される、などの考え方が無意識のうちに家族や恋人同士の関係に影響を与えています。その結果、一方が過度の従順さを求められ、不本意であってもそれに応え続けると、「関係」のあり方にゆがみが生じます。DVやデートDVには身体的、性的な暴力だけでなく、このような精神的、経済的な暴力などの多様なかたちの暴力が潜んでいます。
デートDVやDVの防止には、具体的な状況への対応を学ぶことが近道です。人と人との対等な関係がどのようにあるべきかを具体的状況を通して、互いに理解を深め、互いの求めることが異なるときは、安易に相手に合わせるのではなく、相手と自分が求めていることについて擦り合わせすることが大事です。面倒なようですが、そのプロセスを経ることが、私たちが「対等な関係」のあり方を学ぶ一番の近道になります。
恋愛に関わることがらは、当事者同士での解決を探りがちですが、行き詰まったときには当事者のみの閉じた状況からの脱出も必要です。デートDVやDVが社会問題化されている現在では、学校や行政など相談窓口は多様に用意されています。公的機関の相談窓口は、対面だけでなくSNS経由などチャンネルも多様であり、誰かに知られることが心配であれば、匿名で相談することからはじめることもできます。
家族やパートナーが自分と同じ人間であることを意識し、女性と男性といった性別に関わらず、互いに尊重し合えるとき、はじめてお互いの権利を損なうような状況を避ける力が得られます。女らしさ男らしさを超えて、お互いに意志のあるひとりの人同士としての対等な関係を考えることの積み重ねが、互いの尊厳を守ることにつながり、安全・安心な社会の構築につながっていきます。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ