国際女性デーに考える

~働く女性と日本の未来~

 3月8日は国際女性デーです。昨年は、女性労働の歴史と男女の賃金格差について研究したクラウディア・ゴールディン氏がノーベル経済学賞を受賞しました。私が日本代表を務めた国際労働機関(ILO、国連の専門機関)は、労働分野の国際基準を設定する機関ですが、働く女性についての調査研究成果を毎年国際女性デーに発表します。特に創設100周年にあたる2019(平成31-令和元)年は集大成ともいえる報告書が公表されました。同年採択された記念宣言とあわせて紹介しつつ、これからの日本における働き方についても考えてみたいと思います。

田口 晶子さん

中央大学講師、日本ILO協議会監事、前国際労働機関(ILO)駐日代表

京都大学法学部卒業。労働省(現厚生労働省)及び関係団体でさまざまな業務に従事後、2015(平成27)年3月退官。2015(平成27)年4月~2016(平成28)年1月 立命館大学公務研究科教授、2016(平成28)年2月~2020(令和2)年5月までILO駐日代表を務めた。

ジェンダー平等に向けて大跳躍
~より良い仕事の未来をすべての人に~

ジェンダーギャップの現状:格差解消には200年も!
ILOは2019(平成31-令和元)年報告書で、「仕事に関するジェンダーギャップは、世界全体で過去20年間ほとんど縮小しておらず、今のペースのままでは格差解消に200年以上かかる」と発表しました。 いくつかの指標を紹介します。

①就業率

2018(平成30)年の世界全体の就業率は、女性48.5%、男性76%で、過去30年近くほとんど変わらず、特にアラブ諸国、南アジア、北アフリカ地域では、女性就業率は20%台に過ぎません。

②賃金

世界全体で女性の賃金は依然として男性の平均8割です。高所得国では高賃金層、低・中所得国では低賃金層で格差が大きく、女性労働力が多数を占める職業や企業ではどこの国でも男女共に賃金が低い傾向があります。

③使用者・管理職の割合

世界全体の使用者の男性は女性の4倍で、女性管理職は管理職全体の3分の1以下です。幼児のいる女性では、管理職に占める割合がさらに低くなっています。

④無償のケア労働

無償のケア労働に費やされている時間は、1日8時間労働換算で20億人分、世界全体の国内総生産(GDP)の9%を占めています。女性は1日平均4時間25分、男性は1時間23分です。

仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言におけるジェンダー平等

 記念宣言にはジェンダー平等に関する政策提言も含まれています。
⚫️男女の同一価値労働に対する同一の賃金を含めた平等な機会、参画および待遇を保障する
⚫️より均等な家庭内責任の分担を促進する
⚫️労使それぞれの必要性や利益を考慮した労働時間を含む、労働者と使用者による解決策への合意を達成可能にすることで、より良いワークライフバランスを達成するための機会を提供する
⚫️ケアエコノミーに対する投資を促進する
これらの分野に関して日本でも諸政策が行われていますが、ジェンダー平等の達成のために、更に積み重ねていく余地はあると思います。今年の報告書も更なる議論を呼ぶことを期待しています。

2024年1月号 コンテンツ

P.2-4

P.5

P.6

P.7

P.8-9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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