クレオ大阪中央研究室長 服部 良子
(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)

ハラスメント相談窓口が
従業員のモチベーションを高める!

~大阪市ハラスメント調査結果(2020年度)から~

 2020年度大阪市ハラスメント調査結果では、企業規模によって「相談窓口」の設置や研修の実施、社内規定や実態把握の有無に大きな差が出ました。そこで、今回注目したいのが、相談窓口の設置についてです。
 「相談窓口がある」という企業は全体で27.9%でした。大企業は6割が相談窓口を設置していますが、中小企業では13.5%です。また、中小企業ではハラスメント対策に「全く取り組んでいない」が44.3%もあります(図表1)。企業規模で差が生じている原因のひとつは、パワーハラスメント(以下、パワハラ)防止法です。300人以上の企業(大企業)は2020年6月からパワハラ防止法による対応が義務化され、299人以下企業(中小企業)は2022年3月31日までの「努力義務」としているためです。

5人に1人が経験している仕事でのハラスメント

 厚生労働省は、職場のパワハラを6分類して示しています(図表2)。今回の大阪市の調査ではパワハラに加え、セクシュアル・ハラスメントや育児介護休業取得をめぐるハラスメント等も対象としました。仕事でハラスメントを受けたことがある人は5人に1人で決して少なくありません。「見聞きした経験がある」人も約4人に1人となっています。
  ハラスメントを受けた人の3人に1人が「職場の上司や先輩」に相談していますが、「誰にも相談しなかった」人も3人に1人います(男性40.6%、女性25.3%)。この「誰にも相談しなかった」理由として、「誰に相談してよいのかわからなかった」人が5人に1人いることは注意する必要があります。
  相談することで「また不快な思いをする」(30.3%)ことを避け、「自分さえ我慢すれば」(18.2%)と相談をしないケースもあります。さらに「相手の仕返しが怖い」(16.7%)等の理由から相談しない場合もあります。今回の調査では大変残念なことに「ハラスメント被害を相談しても無駄」(56.1%)という人も少なくありませんでした。

ハラスメント相談窓口の設置は急務

 この結果は、相談窓口の存在の大切さを教えてくれています。相談窓口が設置され、従業員がいつでも利用できるようにその存在が知られていれば、「誰に相談してよいのかわからない」ために「誰にも相談しない」事態は生じないでしょう。また、相談窓口を通してハラスメントが速やかに事実確認され適正に対処されることで、ハラスメントを受けた従業員の心身の影響も少なくてすみます。実はハラスメントを受けたことによる心身の影響に関する調査項目の結果では、半分以上の人が「仕事のやる気がなくなる」と回答しています。
  ハラスメントによる心身の不調は従業員の仕事のモチベーションを著しく低下させます。パワハラにより当事者が自殺するケースも見られます。そして、その場合、その企業の対策の不備が指摘されます。企業規模を問わず、従業員の声を聴くためにもハラスメント相談窓口の設置が急務といえるでしょう。ハラスメント防止策を企業が行うことは、従業員のメンタルヘルスを守り、結果として企業の生産性を高めることにもつながるのです。

2021年5月号 コンテンツ

P.2-3

P.4-5

P.6

P.7

P.8-9

P.10

P.11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
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