若者とジェンダーバイアス

濱田 智崇さん

(京都橘大学総合心理学部准教授、臨床心理士・公認心理師)
平成7(1995)年、日本初の男性相談『男』悩みのホットラインを開設し、各地の自治体での男性相談事業にも携わる。平成23(2011)年~男性専用のカウンセリングオフィス天満橋代表。令和元(2019)年~一般社団法人日本男性相談フォーラム理事。主著書『男性は何をどう悩むのか 男性専用相談窓口から見る心理と支援』(平成30(2018)年 ミネルヴァ書房)

若者たちの「性別による思い込み」

 今回は若者をテーマに取り上げます。中学生や高校生の皆さんにも読んでもらえると嬉しいです。  「アンコンシャス・バイアス」という言葉を聞いたことがありますか?最近、ジェンダー(社会的・文化的に構築された性別や役割)に関する文脈で、よく使われるようになった言葉です。日本語では「無意識の思い込み」などと言います。アンコンシャス・バイアスは、ジェンダーに関するものだけでなく、様々な場面で生じ得るのですが、ここではジェンダーバイアス(性別による思い込み)を取り上げることにします。

 東京都が行った意識調査(※1)の結果から、一部をご紹介しましょう。約1万人の高校生に尋ねたところ、「理系科目は男性の方が得意だと思う」に、男性の19.6%、女性の33.2%が「そう思う」と答えています(図1)。育児について「女性の方が向いていると思う」では、男性の48.4%、女性の53.6%が「そう思う」と答えています(図2)。中高生の皆さんは、これを見てどう感じましたか?50代男性である私から見ると、この結果は2つの点で意外でした。1つは、若い世代でも「性別による差はある」と思っている人が少なくないこと、もう1つは、女性の方が男性よりもそう思っている割合が高いことです。

「無意識であること」の問題

 だからといって、私が皆さんに、価値観を変えなさい!などと言うつもりは、まったくありません。個人がどんな価値観を持つかは、もっとも尊重されるはずのもので、誰かから強制されることはあってはならないからです。ただ、皆さんに少し考えてみてほしいのは、「自分のその価値観が何を根拠にできたものなのか」ということです。

 実は、全国学力・学習状況調査では、中学生の理数系学力において、数学は男女差がなく理科は女子がやや高いことが明らかになっています(※2)。それなのに「男性の方が理系科目は得意」と感じるのはなぜでしょうか。まだ経験していないはずの「育児」を、女性の方が向いていると判断した材料は何でしょうか(親を見ていてそう思った、と言われてしまうと私たち親世代はぐうの音も出ないのですが)。

 「アンコンシャス・バイアス」の何が問題かというと、私は「アンコンシャス」つまり「無意識」であることだと考えています。無意識のうちに決めつけてしまうことで、気づかないうちに、将来の可能性を狭めてしまうことにもなり得ます。例えば、理数系が得意な女性がその道を諦めてしまったら、とても残念なことだと思いませんか。自分の得意分野で活躍し、充実した人生を送れたかもしれないですし、もしかしたら、その女性の開発した薬が人類を救ったかもしれません。そして、その女性をサポートする家事や育児が得意なパートナーと出会えたかもしれないのに。

「違和感」を大切に

 無意識の思い込みを防ぐための方法のひとつは、自分の中の「違和感」を大切にすることです。「ちょっと変」とか「何だか嫌かも」といった感覚を、「親が気にするなって言うから」「先生がこれでいいって言うから」「SNSでそう言われているから」といった理由で、なかったことにしてしまった経験はありませんか? 

 大人の言うことがすべて正しいとは限りません。大人がこれまで作ってきた社会にも、変えた方がいいところはたくさんあります。今は特に情報が多すぎて、何が正しいのか判断するのが難しい時代です。そんな時代に多感な時期を過ごす皆さんには、私たちとは違った大変さがあるのだと想像します。しかしだからこそ、すぐに「正解」を決めてしまうのではなく、違和感を大切にして、それについて考え、率直に話してみてほしいのです。違和感にはきっと意味があるはずです。皆さんが違和感を伝えてきてくれた時、それと向き合うことのできる大人でありたいと、私自身は思っています。

2026年5月号 コンテンツ

P.2-3

P.4

P.5

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P.6

P.7

P.8-9

P.10-11

表紙

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