専門分野:社会政策、 ワーク・ライフ・バランス問題
女性活躍が推進されている状態であると人々が意識することがらは様々です。令和6年度に実施した「大阪市男女共同参画に関する市民意識調査」(以降、「市民意識調査」)(図1)のなかでも、「①出産しても、子育て期間中でも仕事を続ける女性が増えること」は、男女を問わず43.8%の市民が「女性の活躍が推進されている状態」であると指摘するところです。また、「②退職した後、再就職しても、また正社員になる可能性が開かれていること」や、「③女性が従事する職種・職域が増えること」も、制度整備の点から「女性の活躍が推進されている状態」と認められているといえます。働く女性の姿が数のうえでも、職業分野のひろがりにおいてもはっきりと確認できることが市民に女性活躍と意識されているといえます。
同時に、地域社会や家庭の場での女性の活躍を注目する市民も少なくありません。とりわけ「④リーダーや会長選定を検討する際に、男女の性別を意識しなくなること」は、女性と同じくらいの割合の男性が「女性の活躍が推進されている状態」であるとしています。さらに、大阪市民のおよそ4人に1人は、「⑤仕事や家庭、地域活動などに男女の固定的な役割分担がないこと」も挙げています。つまり意識面でも男女共同参画のひろがりこそが、仕事だけでなく、地域活動、そして家庭の女性活躍の推進のかなめであることが理解されているといえるでしょう。
就業の場においては、日本の女性の就業者は年々増加傾向にあります。総務省の労働力調査によると、令和6(2024)年の女性就業者は3,082万人で、前年よりも31万人増えました。女性の正社員比率も若い世代を中心に上昇しています。
今回の市民意識調査でも、「就業の場で活躍している女性が増えた」という設問に「そう思わない」(「そう思わない」+「どちらかといえばそう思わない」)とする人が22.3%であるのに対し、3倍弱の59.9%の人が「そう思う」(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)としています(図2)。
そして、「就業の場でリーダー的な役割(管理職等)を担う女性が増えた」という設問に「そう思う」とする人が45.2%であるのに対し「そう思わない」とする人は33.0%となっています。「リーダー的な役割を担う女性が増えた」とする人は先述の「就業の場で活躍している女性が増えた」とする人よりも割合が低くなるものの、どちらも「増えた」とする人が多くなっています。このことからも、女性活躍は着実に進展しているといえるでしょう。
その一方で、女性が就労するときに直面する問題がまだまだあることも多くの市民に意識されています。市民意識調査によると、女性が働き続けることや再就職を希望しても実現できない理由がいくつか指摘されています。そのなかで最も多くの市民が選んでいたのが「②仕事内容、勤務場所、勤務時間等について、条件にあう働き口が見つからないため」(男性55.2%、女性65.7%)です。そして、それに続くのが「④育児負担が大きいため」(男性55.7%、女性56.6%)、「①保育所への入所や延長保育や一時預かり、休日保育など、保育サービスが利用できないため」(男性51.7%、女性55.0%)でした(図3)。いずれの項目も、半分を超える市民が就業継続や再就職のハードルと意識していることがわかります。特に、育児に関する項目は男女の差異が小さく、そのハードルは男女ともに共有されています。
また、育児負担だけでなく家事負担も多くの市民が指摘しています。「③家事負担が大きいため」については、女性は半数を超える53.3%に対し、男性は41.4%と、男女の差異が最も大きい項目となっています。固定的な性別役割分担意識が根強く残っているためか、男性の想定以上に家事が女性への負担となっているともいえます。
こうしたワーク・ライフ・バランスに関する課題の解決に向けては、個人が仕事とプライベートのバランスを意識した行動を心がける必要があります。さらに、柔軟な働き方や休暇取得の促進など、企業側でも働き方改革をしていく必要があります。
仕事内容、勤務時間などの働き方は雇用する企業が決めているものであり、働く人にとっては「自分ではどうにもできないもの」となっているからです。こうした働き方の改革を企業に対して促す働きをしているのが女性活躍推進法です。
巻頭特集の対談でもふれましたが、女性活躍推進法は、女性が働き続け、男性と差異なく活躍できるような具体的な働き方についての実施計画を作ることを求めている法律です。女性活躍推進法に基づき、取組が優良である企業に対しては厚生労働省から「えるぼし」マークや「プラチナえるぼし」マークが大臣認定として与えられます。
行動しないことに対する罰則ではなく、取組を称えることによって企業の変化を促す仕組みです。社会の働き方について、雇用されている人々よりも大きな決定権をもつ企業に対する、とても積極的なアプローチの法律といえます。
大阪市でも、平成26(2014)年から「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」認証制度によっても女性活躍の推進に取り組んできました。大阪市の企業についても、働き方の変化はリーディングカンパニー認証を通じて成果やデータとして見えるようになりつつあります。
いずれの認証制度のデータもホームページ等で公開されており(3ページの注釈参照)、認証企業は女性が活躍しやすい企業としてアピールすることで、社会的なイメージアップを図ることができます。また、学生の就職活動において、企業の比較検討に活用されています。市民が求める企業の働き方に変化を促す役割を果たしているといえるでしょう。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ