11月25日は「女性に対する暴力撤廃の国際デー」です。ドメスティック・バイオレンス(以下、DV)は、人権を著しく侵害する重大な問題で、男女共同参画社会の実現のためにも解決しなければならない課題の一つです。
 DVは、配偶者やパートナーなどから振るわれる暴力という意味で使用されてきました。夫婦や家族のなかの暴力は、外部から見えにくく、加害者に罪の意識が薄い傾向があります。被害者もまた他者に助けを求めることをためらう傾向があります。そのため周囲が気づかないうちに被害が深刻化しやすいのです。
  残念なことですが、これまでの社会慣習のなかで、特に夫婦内の暴力は許されてきた経緯もありました。しかし、配偶者など他者を自分の思い通りに支配するために暴力を使うことは、その人を大切に思っていないことを意味しています。
  昭和59(1984)年の設立から、40年にわたり、女性の身体と心、そして性を大切に、女性たちの声に耳を傾けて活動を続けてこられた、ウィメンズセンター大阪の皆さんにお話をお伺いしました。

女性のための安心・安全な場所をつくる中で見えてきたこと

ウィメンズセンター大阪

 昭和59(1984)年に「女性のためのクリニックを作ろう」と集まり、できたのが私たち「ウィメンズセンター大阪」です。設立以来、女性が自分の身体や性について主体的になることが女性の自立の基本であると考えて活動してきました。平成7(1995)年に開催された国連の第4回世界女性会議(北京女性会議)以降、リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関わる健康と権利)という言葉が聞かれるようになりました。これは、女性が自分の身体や性について、知識を得る権利・自ら決定する権利があるということを示したものです。ウィメンズセンター大阪で使っている「わたしの身体はわたしのもの。わたしの心もわたしのもの」という言葉におきかえると、より身近でわかりやすく感じられるのではないでしょうか。

私たちは、安心・安全な場所で、自分たちの体験を語りあい、分かち合う機会を作っていますが、その中で、女性へのさまざまな暴力の実態が明らかになりました。40年にわたり実施してきた「女の性とからだ」電話相談では、産婦人科医療の現場をはじめ、日常生活の中で女性がいかに自分の身体や性について否定され、受け身にさせられているかを感じます。

ウィメンズセンターが平成9(1997)年に実施した「女性への暴力の実態とサポートの状況を知る」というアンケートでは、性暴力被害にあう背景として、「相手を怒らせるような言動や態度があった」、「被害者にも落ち度があった」とする回答が500人中423人にのぼりました。こうした考えや意識は、暴力を受けても誰にも言えないという状態を生みやすいものであり、暴力の実態を見えにくくしています。またこれらの意識により、性暴力被害の実態がいかに封印されてきたかをうかがい知ることができます。

「自分にも落ち度があった」、「相談するのが恥ずかしい」という意識は、「被害者にも落ち度がある」という考え方につながってしまう意識でもあるといえます。「相手を怒らせるような態度や言動があれば暴力もやむをえない」と思ってしまう、または、思わされてしまっているような社会のありかたを変革していかなければ、暴力防止は実現しないのではないでしょうか。

平成22(2010)年4月に、性暴力被害者のための救急医療としての機能をもち、中長期的に同行支援や生活支援および司法的支援をワンストップで支援できる場所として、病院拠点型の「性暴力救援センター・大阪SACHICO」が設立されました。私たちウィメンズセンター大阪は、その設立に携わるとともに、事務局を10年間担当し、相談に携わる支援員の養成にもかかわりました。ウィメンズセンター大阪設立から40年という期間の中で、私たちのもとに届いた、女性たちの一人ひとりの声が形となり、『性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センター』の設立へとつながったと感じています。

平成29(2017)年には、実に110年ぶりに性犯罪についての「刑法」改正が実現されました。この法改正により、「強姦罪」の罪名が「強制性交等罪」に改められ、被害者の性別は問わないこととされました。また、強姦罪等の非親告罪化により、性犯罪について親告罪とする規定が削除され、告訴がなくても起訴することができるように改められました。その後、令和5(2023)年にも改正があり、「強制性交等罪」から「不同意性交等罪」に罪名が変更され、性交同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられました。

明治時代の制定以来、110年間もの長きにわたり変わらなかった「刑法」という法律が変わっていくという劇的な時代に立ち会う中で、この法律をどう使いこなすのか。私たちが生きやすい社会のためにどう活かしていくかは、私たち自身にかかっているという想いをあらたにしています。

ウィメンズセンター大阪

女性の心とからだをトータルにサポートする、女性による女性のための女性支援センターとして昭和59(1984)年に設立。カウンセリングをはじめ、女性たちがお互いの知識や経験を持ちより、悩みや問題を共有しながら問題解決の力をつけていける場としてさまざまな講座を企画運営している。また、日本ではじめての性暴力被害者支援ワンストップセンターである「NPO法人性暴力救援センター・大阪SACHICO」の事務局を10年間担当した。支援員の養成講座や、講師および相談員の派遣なども行っている。

お問い合わせ
06-6632-7011 平日(月〜金曜日)10:00〜17:00
ウィメンズセンター大阪 HP

2024年10月号 コンテンツ

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表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
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