DVの現状と理解

クレオ大阪中央研究室長 服部 良子
(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)

データからみるDVの現状

 ドメスティック・バイオレンス(以下、DV)は、深刻な人権侵害であり、生涯にわたって長期的な影響を及ぼすだけでなく、女性の社会参画を阻害する要因の一つであると捉えられています。繰り返し暴力を受け、命の危険を感じるような暴力の被害者には女性が多い傾向があります。また、女性だけでなく、子どもや女性の周辺の人も同時に暴力の対象になることが少なくありません。

  DVの調査データが示すように、多くの女性が被害を受けている現実があります(図1)。内閣府が行った「男女間における暴力に関する調査」では、配偶者からの暴力の被害経験について「何度もあった」と回答した女性の割合は13.2%、「1、2度あった」は14.3%となっており、女性の約4人に1人は被害を受けた経験があると回答しています。

  また、配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数は、令和2年度に過去最高となり、その後も高水準で推移しています。令和2年に過去最高となったのは、新型コロナの感染対策による外出自粛や休業などにより生活不安・ストレスが高まったことや在宅勤務で夫婦で家にいる時間が長くなったことが影響していると考えられます。

図1 配偶者からの暴力の被害経験(女性)

図2 配偶者からの暴力の被害経験配偶者暴力相談支援センターへの相談件数の推移(年次)

DV理解の展開​

DVは身体的暴力に限りません。怒鳴りつけたり、無視したりするなどの精神的な暴力のほか、生活費を渡さないなどの経済的な暴力、つきあいを制限するなどの社会的な暴力、性的な暴力、そして子どもを巻き込む暴力などがその一部です。

実際に大阪市の市民意識調査でも多くの人がこうした行動をDVと考えています(図3)。精神的な暴力にあたる「暴言を吐いたり、ばかにしたり、見下したりする」行為は70.3%の人が、「何を言っても無視し続ける」行為は50.0%の人が「どんな場合でも暴力にあたると思う」としています。「自由にお金を使わせない、生活費を渡さない」は経済的暴力、「友達や身内とのメールなどをチェックしたり、つきあいを制限する」ことは社会的な暴力とされていますが、それぞれ58.4%、56.5%と、過半数の人が、「嫌がっているのに性的な行為を強要する」のは78.9%の人が「どんな場合でも暴力にあたると思う」と回答しています。単に殴る、蹴るなどの身体に対する暴力だけが、「暴力」だと思われがちですが、相手を支配しコントロールしようとするあらゆる態度や行動が暴力であるととらえられています。

DV被害者救済が法的に社会の課題となったことは、夫婦間の暴力に対する市民のとらえ方を変化させたと言えるでしょう。

図3 配偶者・パートナーの間で行われた場合に暴力だと思う行為

DV法と支援体制

 DV防止法は平成13(2001)年に制定されました。改正が重ねられるなかで、様々なかたちのDVへ法的に対応する仕組みが整えられてきました。さらにつきまとい(ストーカー)も暴力のかたちの一つです。DV防止法とほぼ同時期に制定改正されてきたストーカー規制法は、DV防止や被害者対応と関わっています。平成16年(2004)年の改正では、「配偶者からの暴力」の中に身体的暴力に加え、言葉や態度による精神的暴力も含まれるようになったほか、法律婚の配偶者や事実婚だけでなく「元配偶者」まで保護命令の対象となりました。さらに、平成19(2007)年には、電話やメールその他の送付や名誉侵害なども取り締まり対象となりました。平成25(2013)年には、いわゆる同棲する交際相手も対象とされています。

  そして令和元(2019)年には児童虐待に関連するDV被害者の保護のため児童相談所との連携協力も定められました。令和5(2023)年改正では、さらにDV被害として精神的な暴力やことばによる暴力が加わりました。そして接近禁止命令が1年に延長され、保護命令違反が厳罰化されました。日本ではじつに四半世紀近くかけてDV防止と支援の法制度と体制が整備されてきているのです。

  令和5(2023)年改正法ではDV防止と被害者保護の協議会が法定化に向けて、国と地方自治体、そして民間の団体との連携や協力が求められました。大阪市ではすでに平成14(2002)年から、大阪市DV施策ネットワーク会議が運営されています。困難女性支援法に対応する相談もふくめて、DV防止のさまざまなかたちで支援が展開されています。被害者を中心に、協働しながら必要な支援を共に考えていく体制が求められています。

2024年10月号 コンテンツ

P.2-3

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P.8-9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
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