クレオ大阪中央研究室長 服部 良子(専門分野:社会政策、ワーク・ライフ・バランス問題)
男女共同参画社会の実現のために、平成11(1999)年に男女共同参画社会基本法が制定・施行されました。その進捗をはかるため、内閣府では「男女共同参画社会に関する世論調査」を、大阪市でも「男女共同参画に関する市民意識調査」を実施しています。これらの調査の結果から「男女の地位の平等感」を取り上げ、男女共同参画意識の現状を探ります。
内閣府調査(令和4年度)によると、社会全体として男性と女性のどちらが優遇されているかを問う設問では、平等であるとする人は全体の14.7%、となっています(図表1)。「男性優遇」とする人は全体の8割近くいます。性別でみると、「平等」とする人の割合は男性で高く、「男性優遇」とする人の割合は女性で高くなっています。年代でみると、平等と答えた人は20代で高く、「男性優遇」とする人は50代・60代で高くなっています。若い世代の平等感が全体と比較した時に相対的に高いことは、男女共同参画社会基本法のもとでのこれまでの私たちの取組の成果であり明るい希望といえるでしょう。 ただ「社会全体としての平等感」でなく「場ごとの平等感」は少し異なる結果が示されています。さまざまな場によって男女の地位の平等感に差があるのです。
例えば、大阪市調査(令和元年度)において、学校教育の場での平等感をみてみると、「平等」と回答する人が49.9%となっています(図表2)。政治や職場などの他の分野と比較して「平等」と回答する人の割合が圧倒的に高くなっています。この結果は、教育など分野によっては男女共同参画の推進に大きな進展があったことを示しているといえるでしょう。学校での男女混合名簿の導入や理工系大学生の女性比率の増加などの取組の積み重ねがもたらした進展です。 一方で、政治の場で「平等」であると回答する人の割合は全体で10.9%、職場では19.4%です。日本のジェンダーギャップ指数(P5「やってみよう!男女共同参画クイズ」)は、特に「経済」「政治」の分野での順位が著しく低くなっていますが、じつは市民もこれらの分野での女性の参画度合が低いという実感があるといえます。 社会全体を仮に平均値とすると、政治の場や社会通念という場での平等感の低さは、学校教育や地域活動・社会活動など他の場面での高い平等感を引き下げているといえるでしょう。
今回は男女共同参画社会の実現のための指標のひとつとして平等感のデータを取り上げました。このような市民の協力で可能となる意識調査は、社会の状況を適切に把握する基礎資料として重要なものです。国でも地方公共団体でも男女共同参画社会基本法にもとづく取組の積み重ねが、例えば「男女の地位の平等感」をめぐる意識調査結果に示されると考えられるからです。男女共同参画社会の実現のための指標のひとつとして平等感のデータは意識調査の焦点の一つとして注目され続けます。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ