草山 太郎さん

追手門学院大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授。専門は障害学。
障がい者のスポーツ、セクシュアリティ、近年は文化と地域づくりについて研究。大学のゼミでは、義足のダンサー・女優として活躍する森田かずよさん、茨木市文化振興財団とともに、障がいのある人とない人がともにダンスを創作するプロジェクトを行っている。京都のおやじダンスカンパニー「ロスホコス」メンバー。

<おやじ>「真面目」に踊る

 私は大学教員として仕事をする傍ら、ロスホコス(Loshocos)というダンスカンパニーで、ダンサーとしても活動をしています。私たちのカンパニーの特徴は、ダンサーが「おやじ」であることです。コンテンポラリーダンス(※1)を基本に、芸術性と娯楽性を兼ね備えたダンス活動を展開し、若い肉体がもつ瞬発力や機敏性はなくとも中高年ならではの「味」のあるうごきで「生」を表現することを楽しんでいます。

 カンパニーの演目には、いくつか「クロス=ジェンダード・パフォーマンス」といえるダンスがあります。「クロス=ジェンダード・パフォーマンス」とは、「“男の歌”を女性歌手が歌う、あるいは、“女の歌”を男性歌手が歌う」(※2)ことですが、私たちの場合、女性歌手が歌う“女の歌”で、男性である私たちが踊ります。

 これは、異性の楽曲を通じて性別の枠を超えた表現を試みるアート形式です。男性が女性の楽曲に合わせて踊ることで、性別に囚われない表現の可能性を広げ、観る人に性の多様性を訴えることができると思います。つまり、性別のステレオタイプを打破する可能性があるということです。

 その一方で、性別を超えた表現をめざしながらも踊る側の認識不足や不適切な演出によりステレオタイプを強化してしまう可能性もあります。この「諸刃の剣」といえる点について、ダンスという身体表現を編み上げて創作するプロセス、そして、実際にパフォーマンスを観てもらう際も、考え続けています。

※1 コンテンポラリーダンス…振付や表現方法に決まりがなく、自由に身体表現するダンス。
※2 中河伸俊「転身歌唱の近代─流行歌のクロス=ジェンダード・パフォーマンスを考える」(北川純子編『鳴り響く性─日本のポピュラー音楽とジェンダー』、勁草書房、平成11(1999)年)より引用。

セーラー服を着て「クロス=ジェンダード・パフォーマンス」を行う
のびのびと「生」を表現する「おやじ」たち

<おやじ>という言葉の意味

 私たちは、いま、「Japan Oyaji Dance Network(仮称)」の立ち上げ準備をしています。そこでわかってきたのですが、全国にいくつかある男性のダンスチームの多くは(現時点で全て!)、その名称に「おやじ」がふくまれているのです。

 「おやじ」という言葉は、性別役割を想起させるなど、さまざまな視点から批判があるかと思います。じつは、私自身も「おやじ」という言葉は、いまのカンパニーに入るまで自分で使ったことがなく、違和感を持たないわけではありません。ただの「男性」でええやん、と思っています。

 とはいえ、私たちのカンパニーがこの言葉を採用している理由は、リタイヤして居場所や存在意義自体を見失っている男性に向けて、「大丈夫!ここに居場所があるよ!いっしょに楽しく生きていこう!」とのメッセージを伝えたいからです。そのためには、「男性」よりも親近感を持ってもらえる、そして、いわゆる「ちょいワルおやじ」のように「カッコ」つけたい、という意図と願望からなのです。そのあたりを理解していただき、今後の私たちの活動を見守っていただければと願っています。

2024年7月号 コンテンツ

P.2-3

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P.8-9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
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