令和5年度学校基本調査(文部科学省)によると、大学の理工系の学生に占める女性の割合は、理学系27.9%、工学系16.1%とまだまだ低い水準です。この背景には、「女性は理工系に向いていない」といったアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の影響や、ロールモデルとなる女性が少ないために、医師、薬剤師等に比べて、将来のキャリアイメージが持ちにくいことも指摘されています。
理工系に進学すると、どのようなキャリアの可能性があるのでしょうか。大阪工業大学工学部応用化学科教授の森内隆代さんにお話をうかがいました。
大阪工業大学 教育センター長、工学部 教授。岡山県生まれ。小学2年から大阪在住、工学博士。平成8(1996)年大阪工業大学に講師として着任し令和3(2021)年より現職。
理工系分野に進学すると、学部卒業後には、技術職として一般企業に就職する、教職課程をとって教員になる、大学院に進学して研究者をめざすといったキャリアが考えられます。技術職という仕事のイメージは、身近なところにロールモデルがないために、なかなかイメージを持ちづらいかもしれませんね。素材開発や品質管理に関する仕事というと少し想像できるでしょうか?
たとえば、不織布を作っている会社に就職したとします。不織布は、空調機のフィルターや、マスク、そして美容用のパックなど、様々なものに使われています。技術職としてこういった会社に就職すると、「医療用マスク」など一つの製品にかかわる仕事を任されることになります。もちろん、チームで情報共有し、困ったときに助け合う体制はありますが、基本的には一人に任される。そのため仕事のスケジュールを自分でマネジメントできて、自分のペースで仕事をしやすいという利点があります。その点で、技術職という働き方はワーク・ライフ・バランスを取りやすい職種ということもできるんです。
この10年で職場環境も改善され、どんどん技術職の女性が働きやすくなっています。一般的にみて、技術職は給与水準も高く、とても良い働き方といえるのではないでしょうか。日本の男女賃金格差を解消していくことの近道の一つとして、女性の理工系分野での就職がカギになるんじゃないか、とも思っています。
『サイエンスアラカルトエコールプロジェクト』という大阪工業大学の学生プロジェクトでは、子ども向けの理科教室などの取組をしていて、クレオ大阪子育て館でも、「リコチャレ応援セミナー」として女子学生のチームで科学実験をお届けしています。セミナーでは、メンバーの学生たちが「私はなぜ理系進学をしたのか」という話を子どもたちにします。「理系の科目が得意」ということに限らず、「理科の実験が楽しかった」ということが動機となっている学生がとても多いです。
近年では、女子学生の理工系分野への進学を応援する観点から、入試に「女性枠」を設ける取組も進んでいて、大阪工業大学では、関西圏の中でもいち早く「女子特別推薦入試」などに取り組んでいます。理系といってもいろいろな分野がありますが、例えば「化学」だと、化粧品や医薬・臨床分野だけでなく、部品の多くが化学製品でつくられている自動車分野や、情報化学(コンピューター計算)分野に進むこともできます。幅広く興味のあるところに繋がることができるので、ちょっとでも興味があれば、ぜひ理系に進んでほしいと思います。どんな分野でも面白いんです!
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ