毎年3月8日の国際女性デーは、女性たちの成果を称え、女性の権利やジェンダー平等について考える日です。女性活躍が社会全体の課題となっている今、その実現に向けた取組はますます重要になっています。様々な分野で経験を重ね、現在は大阪大学で女性活躍やダイバーシティの推進に携わっている西岡英子さんに、これまでの歩みや活動の内容、そして国際女性デーに改めて考えたい“女性活躍”についてお話を伺いました。
ーこれまでのキャリアやご経験について教えてください。
20代後半は、香川県で全国紙のアシスタント記者として障がい者や外国人、女性問題など人権に関わる取材を担当していました。取材を続ける中で、非正規雇用、セクシュアルハラスメント、男女の賃金格差といった現実に触れ、労働問題は女性問題であり自分自身の問題でもあると強く意識するようになりました。新聞社を退職後、高松市女性センター(現、高松市男女共同参画センター)に入職し、講座企画や情報発信など多様な業務を担当しました。女性学、男性学を学んだ時期で、個人的にも子どもへの暴力防止プログラム(CAP)を実践する団体を立ち上げ、普及に努めました。そうした中、「自分の経験をより広いフィールドで活かしたい」という想いが芽生え、新しい環境に身を置くことで、これまでとは異なる経験や学びが得られるのではないかと感じるようになり、海外留学経験のある友人からの「自分の能力を活かしたらいい」という言葉にも背中を押され、神戸に移り大学院に進学しました。生まれ育った土地を離れ、知っている人もいない中で一から人脈をつくり、仕事と学びを両立させながら少しずつ仕事の幅を広げ、現在に至ります。私がキャリアを選択する時に大事にしているのは、心から湧き上がる想いに正直に行動することです。自分の視野を広げるためのセミナーやイベントにも積極的に参加し、講師の方に直接お話を伺うなど、新聞社で働いていた頃と同じように、自分の目で現場を見て確かめながら行動してきました。興味を持ったら自ら動き、体験から学ぶ。それは今も私の変わらないスタンスです。
ー令和7(2025)年の大阪・関西万博でも、様々な企画に携わられましたが、具体的にはどのような活動をされましたか。また、万博を通して女性活躍の取組はどのような効果を生んだと感じていますか。
令和5(2023)年に、ローマで開かれたG100(※1)が主催するイベントに参加し、世界の女性リーダーたちと議論を交わす貴重な機会をいただきました。ヘルスケアや食料問題など、多岐にわたるテーマを前に、国際的なネットワークが持つ力と広がりを強く実感しました。この経験が、大阪・関西万博での活動にもつながっており、大阪大学の共催事業として、大阪・関西万博ウーマンズ パビリオンin collaboration with Cartier 2階「WA」スペースで「大阪サクヤヒメEXPO国際女性会議」を開催したほか、ベルギーパビリオンでのイベントに登壇するなど、様々な企画に携わりました。また、万博を訪れたエストニアやオランダなどの女性リーダーや起業家と、日本の女性リーダーが交流する機会もつくりました。文化や価値観の異なる女性たちが、対話を通じて刺激し合う姿はとても印象的でした。大阪・関西万博を通して感じたのは、「女性のリーダーシップは持続可能な未来をつくる力として期待されている」ということです。世界の女性リーダーたちは、自分の意見を明確に伝え、仲間同士で支え合い、挑戦を恐れません。そうした姿を目の当たりにした参加者からは、「私ももっと発言して良いのだと思えた」、「新しいことに挑戦したい」というポジティブな声が多く寄せられました。万博は、女性の可能性を可視化し、一歩踏み出す力を与えてくれる場であったと実感しています。これまでの出会いやつながりを大切にしながら、女性が活躍できる機会を今後も広げていきたいと考えています。
※1 G100(Group of 100 Global Women Leaders)…世界各国の女性リーダーによって構成される国際的なネットワーク
ー令和6(2024)年から大阪大学のダイバーシティ&インクルージョンセンターに着任しておられますが、どのような視点で支援を進めているか教えてください。また、社会全体でジェンダー平等を進めるために必要だと感じておられることもお聞かせください。
学生が将来のキャリアを描いていくためには、多様性が尊重され、安心して学び挑戦できる環境が欠かせません。私が勤める大阪大学では、学生・教職員をはじめとする大学コミュニティ全体に向けて、多様性への更なる理解促進と、女性活躍支援の双方に力を入れて取組を進めています。例えば、入学式では性の多様性についてまとめた「みんなのSOGI多様性ガイドブック」(※2)を配布し、互いを理解し尊重し合うための学びの機会を設けています。また、キャンパス内には誰でも利用できるオールジェンダートイレを整備するとともに、トイレットペーパーと同様に当たり前に設置されている環境をめざし、生理用品をトイレ内で提供するなど、日常生活を安心して過ごせる環境づくりを行っています。さらには、女子学生が学びを深め、将来を見据える力を育むための支援も多面的に実施しています。例えば、理系分野の女子学生によるネットワークを形成し、学部の枠を超えた交流や、小中高生向けに科学の魅力を伝える活動等を行っています。また、「イノベーション女性活躍推進プログラム」では、企業で活躍する女性たちと学生が交流し、実践的なスキルや人とのつながりを育むことで、多くの学生が視野を広げています。
一方、社会全体に目を向けると、女性が力を十分に発揮できる環境が整っているとは言えません。ワーク・ライフ・バランス支援やメンタリングの不足に加え、活動のための資金や機会も限られているのが現状です。大学、企業、自治体などが連携して、女性のキャリアを支援する仕組みづくりが求められています。また、女性のスタートアップ支援や国際的ネットワーク、成功事例の紹介なども必要です。ジェンダー平等の推進は女性だけの課題ではありません。女性の挑戦を応援する男性のアライ(※3)の存在も重要で、そのパートナーシップはジェンダーギャップやSTEM(※4)分野における「障壁」を解消する大きな力になります。近年、多様性への理解が深まり固定的なイメージに違和感を持つ若い世代も増えています。世代や性別を超えた対話の場が広がればと思います。
※2 みんなのSOGI多様性ガイドブック…大阪大学が学生向けに、SOGI(性的指向と性自認)の多様性を尊重し、安心して学生生活を送れるよう作成した資料※3 アライ…英語のAlly(同盟、支援者)が語源で、LGBTQをはじめとするマイノリティのことを理解し、支援しようとする人たちのこと※4 STEM…科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取った教育分野の総称
ー読者に向けてメッセージをお願いします。
世界では、戦争やコロナによるパンデミック、気候変動など、様々な課題が生じています。こうした状況の中で、経済、文化、社会、研究活動には、ジェンダーの視点や多様な能力がこれまで以上に求められています。ぜひ、自分の力を信じて一歩踏み出してみてください。実際に行動して初めて気づくことはたくさんあります。自分の考えや存在を知ってもらい、自分らしさを伝え、周りに影響をあたえることをためらわず進んでほしいと思います。すでに経験を積み、道を切り拓いている人は、勇気を持って、その経験や歩みをこれから挑戦する人たちに伝えてあげることを期待します。大阪・関西万博の教訓からも、国際的で多様なロールモデルに出会い、信頼関係を築くことにより、さらに個々の可能性を引き出すことができるでしょう。また、達成した自分の姿を思い描き、そのイメージに近づくための努力を重ねていくことが、自信と成長の支えになります。一人ひとりの行動と、人と人とのつながりが新しい可能性を拓き、未来をつくる力になると信じています。
大阪大学のキャンパス内では、多様なニーズを踏まえたトイレ環境の整備と、生理用品のトイレ内無償提供を進めています。
西岡 英子さん(大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンター副センター長、教授)
毎日新聞高松支局、高松市女性センター、大阪公立大学女性研究者支援センター(副センター長、特任准教授、プログラムディレクター)等を経て現職。神戸大学法学研究科修士課程修了(政治学)。平成30(2018)年、大阪市立大学(現、大阪公立大学)で開催されたシンポジウムにウィスコンシン大学マディソン校WISELIディレクターを初めて招聘し、「人事選考ワークショップ」を日本に紹介。その後もジェンダー公正に関わる米国・英国・ドイツの先進大学の現地調査を続け、『法学セミナー』(日本評論社)などに記事掲載。主著に『ダイバーシティを実現する人事選考ガイドブックーー多様で優れた人材を採用するための10の心得』(共訳、明石書店)。専門分野はジェンダー法政策、社会学、女性・子どもへの暴力、震災。
国際女性デーにあわせて、次の期間中、大阪市庁舎や大阪城の天守閣が国際女性デーのシンボルであるミモザの花の黄色にライトアップされます。ぜひご覧ください。
●大阪市役所本庁舎3月2日(月)~8日(日) 日没〜0時●大阪城天守閣3月8日(日) 日没〜22時 (ライトアップ主催:大阪市)
オリジナル照明デザインおよび改修工事デザイン監修:(株)石井幹子デザイン事務所
ミモザのメッセージウォールクレオ大阪各館では、国際女性デーにちなんでミモザのメッセージウォールを皆さんと制作します。自分らしく生きられる社会のために活躍した人や、あなたの生活に影響を与えた人への思いを書いて貼り、みんなで国際女性デーを祝いましょう!
● 実施期間 3月1日(日)~ 3月31日(火)
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ