(京都橘大学総合心理学部准教授、臨床心理士・公認心理師)平成7(1995)年、日本初の男性相談『男』悩みのホットラインを開設し、各地の自治体での男性相談事業にも携わる。平成23(2011)年~男性専用のカウンセリングオフィス天満橋代表。令和元(2019)年~一般社団法人日本男性相談フォーラム理事。主著書『男性は何をどう悩むのか 男性専用相談窓口から見る心理と支援』(平成30(2018)年 ミネルヴァ書房)
令和6(2024)年4月、「相互に支え合い、人と人とのつながりが生まれる社会」をめざすとして、孤独・孤立対策推進法が施行されました。(※1)この法律を受けて、「孤独死・孤立死」の実態把握に関するワーキンググループが立ち上がり、警察庁のデータなどからまとめた報告書(※2)が公表されています。それによれば、「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和6(2024)年)」の中で、生前、社会的に孤立していたことが強く推認される「死後8日以上」を経過していたケースは21,856件あります。そのうち65歳以上の15,630件を男女別に抜き出したのが図1です。男性が多いことが一目瞭然で、女性に比べて約3.4倍の方が、社会的に孤立した状況で亡くなっています。
また、令和4年版高齢社会白書で「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」が特集されており、近所の人との付き合い方について尋ねている項目があります。65歳以上の方が「外でちょっと立ち話をする」「物をあげたりもらったりする」「相談ごとがあった時、相談したりされたりする」「お茶や食事を一緒にする」割合は、いずれも男性の方が女性よりも低くなっています(図2)。もっともハードルが低いと思われる「外でちょっと立ち話をする」であっても、男性は約半数の方がしていないと答えていて、男性高齢者の他者とのつながりにくさを示していると考えられます。
※1 内閣官房 孤独・孤立対策推進法 概要※2 孤立死者数の推計方法等について
自宅において死亡した一人暮らしで「発見まで死後8日以上」の件数(令和6(2024)年)
65歳以上の人の近所の人との付き合い方
男性に他者とのつながりにくさがあっても、仕事上はつながりを持っている人が多いため、現役時代には問題になりにくいのです。しかし職場での役割がなくなり、それ以外の人間関係が必要とされる状況になると、問題が顕在化します。職場で与えられていた「地位」や「権力」によってのみつながっていた人は、もう相手にしてくれません。男性は「強くあるべし」と刷り込まれてきたため、自分が「地位」や「権力」を失って「弱く」なってしまったこと自体を受け入れにくく、プライドが邪魔して、新たな人間関係を作りにくいといったこともあります。さらに、男性の「強くあるべし」は「他人に頼るべからず」とセットになっています。必要な時に、他者への援助要請ができないと、状況がさらに悪化して、孤立を深めるようなことになってしまいかねません。
男性にも更年期があることが指摘されて久しいですが、その変化については、もちろん個人差はあるものの、女性の身体的変化に比して、はっきりとしたものではありません。男性向けの強壮剤が「生涯現役」を謳うなど、若い時の状態を維持するべきであるかのような情報も、世間には溢れています。男性が自らの老いと向き合うのは意外と難しいのです。
私のところへ相談に来られる中年期の方にも、若い頃のような働き方ができなくなってきたことに悩んでおられるケースは多いです。そうした方には、自分の変化を、衰えではなく成長と捉えていただき、シフトダウンを意識できるようお話をしています。それが人生の次の段階に備えることにもなるのですが、効率よく成果を上げることが求められる現代は、人生のシフトダウンも難しくなっていると感じます。社会では無駄をなくすメリットが強調されますが、たとえば「無駄話」も実は他者とつながるために大切なのです。本誌8月号(令和7(2025)年発行)の小欄でご紹介した「パパカフェ」(※3)もそうした話ができる居場所作りをめざす活動です。結論を求められない話ができるような居場所を、あらゆる世代の男性が持つことができれば良いのですが…。
※3 パパカフェ…子育て中のパパ同士が交流する場。クレオ大阪子育て館でも定期的に開催している。
発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団) クレオ大阪ホームページ