クレオ大阪中央 研究室長

服部 良子

専門分野:社会政策、 ワーク・ライフ・バランス問題

働く女性の健康は職場と社会の課題

 社会で働く女性の数はどの年代においても増加傾向にあります。それにともない、働く女性の健康は、雇用する企業の生産性や離職率に影響を与えることが認識され、職場の課題となりつつあります。このような背景から、政府も女性の健康支援に力を入れています。令和6(2024)年10月に「女性の健康総合センター」が開所されました。このセンターでは、女性の健康・疾患に特化した研究の推進や女性のライフステージごとの「女性医療」などへの取組が進められています。

望まれる世代別の支援

 働く女性たちは、女性特有の健康課題に対して職場にどのような配慮があると働きやすいと考えているでしょうか。内閣府が行った調査によると、20~39歳の女性では「生理休暇を取得しやすい環境の整備」を挙げる人の割合が最も高く、次いで「出産・子育てと仕事の両立支援制度」、「女性の社員全体の理解」、「婦人科健診・検診への金銭補助」の順となっています(図1)。40~69歳の女性では、「病気の治療と仕事の両立支援制度」を挙げる人の割合が最も高く、「更年期障害への支援」、「介護と仕事の両立支援制度」、「経営陣・トップの理解」の順になっています。年代やライフステージによって、望む支援が異なっているのは働く女性の年代がとても幅広くなっていることが背景にあります。

 とりわけ職場で「健康課題を理由にあきらめなくてはならないと感じたこと」の経験事例として、「正社員として働くこと」(57.9%)や「昇進や責任の重い仕事につくこと」(48.0%)と答える人の多さも注目したいところです(図2)。もし健康課題への配慮や支援が整備されていれば、正社員として働くことや昇進をあきらめなくてもよかったという事情がうかがえます。少子高齢社会の現在、女性人材の就業継続に健康課題がかかわっている現状が示されているといえるでしょう。では、こうした課題はどのように対応がなされているでしょうか。

図1 女性特有の健康課題に対して職場にどのような配慮があると働きやすいか(複数回答)

図2 女性の健康課題が仕事に与える影響

とまどう企業

 企業による対策や支援などは未だ途上です。東京都が実施した調査では、女性従業員への健康支援について「何をすればいいかわからない」と回答した企業が27.5%もあります(図3)。女性の健康や身体にかかわることのためか「セクシュアル・ハラスメントにならないか不安」という心配をする企業もあるのです。現状では、働く女性の健康について企業の理解や対策・支援は、まだまだこれからの課題となっているといえます。

 働く女性の健康課題は社会全体の損失になっているという試算がすでにあり、その額は3.4兆円といわれています(図4)。令和6年度の男女共同参画白書では労働環境及び職場における健康支援について、依然として労働者が男性中心であった時代のままとなっている場合、女性のキャリア継続の障壁の一つとなっている可能性があると指摘されています。いずれは経済損失につながることを理解しながらも、職場においては未だ取組の途上であるのが女性の健康課題であるといえるでしょう。

図3 女性の健康課題について対策や従業員へのサポートを行う上で、困っていること・課題となること

図4 女性特有の健康課題による社会全体の経済損失(試算結果)

解決へのカギは理解と制度

 企業にとって従業員の健康は、業績に直結しています。従業員の健康課題を放置することは、人材活用の面で短期的にも長期的にも経済損失につながるからです。働く女性が社会の各所で増えていくなかで、女性の健康課題は企業の業績により一層かかわっていくことが予想されます。

 女性の健康課題を解決するためには、ライフステージごとの心身の変化だけではなく不妊治療から更年期への対応等、具体的に理解することが必要です。また、女性の健康課題解決のためには、職場理解に加えて、就業継続の両立支援のための制度の工夫も必要でしょう。女性が一生を通じて働くとき、女性特有の健康課題があり、女性活躍と男女共同参画社会の実現のためにも、女性の健康課題解決に向けての取組をより一層推進していく必要があります。

2026年2月号 コンテンツ

P.2-3

P.4

P.5

P.5

P.6

P.7

P.8-9

P.10-11

表紙

発行:大阪市市民局ダイバーシティ推進室男女共同参画課 編集:大阪市立男女共同参画センター中央館
指定管理者:大阪市男女共同参画推進事業体 (代表者:(一財)大阪男女いきいき財団)
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