Withコロナの生活も3年目。人との出会いが減り、新たな価値観に触れる機会は減っていませんか?
今だからこそ、集い、語り合う。そこでしか生まれないものが、きっとあります。
■いきいき財団インターンシップ生 若者の本音トーク!
・インターンシップ、何を学んだ?
・これからのキャリアの形
・2人のおすすめコンテンツ
・未来に向かって
■つながる男性相談 第6回全国男性相談研修会
・鎧を脱ぎ「しんどさ」受け止めよう
福島 充人(一般社団法人日本男性相談フォーラム代表理事)
・男性に募る不安 支援や課題分析を
植田 晃博(笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ研究員)
・時代に応じたつながりを模索
髙橋 俊也(クレオ大阪中央館長)
濱田 智崇(京都橘大学健康科学部心理学科准教授)
さまざまな世代や性別の人が協力し合える社会って? これからのキャリア、家族の形って?
財団インターンシップ生として活動した20代の下津さん、30代の篠原さんに、本音で語り合ってもらいました。
「こうあるべき」から解放 人生の選択肢が広がった
下津 美琴
1998年生まれ。大阪市出身。
武庫川女子大学文学部で英語文化を専攻。卒業後の2021年5月から財団インターンシップ生に。趣味の画像・動画編集のスキルを生かして、チャレンジカフェやクレオ大阪中央フェスタの動画制作などを担当。
ジェンダーの課題解決 生涯勉強し続けたい
篠原 遼子
1989年生まれ。北九州市出身。
大学では英語教育を専攻。卒業後に和菓子店に就職。結婚を機に退職し、夫の転勤でカンボジアへ。日本へ帰国後、2020年から九州大学文学部で家族社会学を専攻。2021年11月から財団インターンシップ生として、イベント・セミナーの運営サポートを担当。
― おふたりがインターンシップをしようと思ったきっかけを教えてください。
下津 大学を卒業してすぐに、インターンシップに参加しました。納得のいく就職先が見つからず、1年間いろんな経験をしながら将来について考えようと思ったからです。『赤毛のアン』で描かれる女性問題について卒論を書くなど、元々関心も高くて。
篠原 私は九州大学で女性のキャリア形成について学んでいます。でも、コロナ下でずっとオンライン講義が続き、物足りなさも感じていて。今住んでいる大阪で何かしたいと思って応募しました。
― インターンシップ期間中、思い出深いことは?
下津 「チャレンジカフェ(※1)」のPR動画作成です。緊急事態宣言でお店を休業せざるをえない中でも、何か今後につながるコンテンツを発信しようと、おやつレシピの撮影や編集を担当しました。カフェは、女性がステップアップする場所として活用しているので、少しでもその役に立てていたらいいですね。
クレオ大阪では、オンラインのセミナーと並行して、対面でのイベントもたくさん実施していますよね。クレオ大阪中央フェスタでは「頑張ってるね」と声をかけてくださる方もいて、地域の方と触れ合うことができました。画面越しの交流ばかりのご時世だからこそ、貴重な時間でした。
※チャレンジカフェ…カフェ開業をめざす女性が期間限定でオーナーとなり、調理や接客、経営などのノウハウを実践的に学ぶ場。
篠原 いくつか男女共同参画セミナーの運営をお手伝いしました。なかでも心動かされたのが、「神戸アジアン食堂バルSALA」代表・黒田尚子さんのセミナー。海外出身の女性がいきいきと仕事して自信をつける姿に、黒田さん自身もエンパワメントされたそうなんです。支援する側、される側のようなパターナリズム的な関係ではなく、フラットな関係が築けているのが理想的ですよね。
ほかにもさまざまなセミナーや講座を見学しましたが、女性たちがここに集い、励まし合いながら、新しいことに取り組む姿勢に感化されました。
下津 人生の選択肢が広がったような気がします。日本では、皆が一緒のタイミングで卒業・就職するのが主流。私はそれができなくて、周りと違うんだと落ち込んでいたんです。でも、ここに来たら、趣味や特技を仕事に活かしたり、専業主婦で子育て中の方が何かを学んだり…。一つの道に縛られていない人たちがたくさんいて、その姿に勇気づけられて。「人生はこうあるべき」という考え方から解放されました。インターンシップを始めてから意欲的になり、以前から関心のあった防災団体での活動にも取り組むことができました。
― 篠原さんも今の進路に至るまでに、悩んだことはあったんですか?
篠原 そうですね。私は福岡出身で、地元の女子大を卒業後、7年間、和菓子販売の仕事をしていました。結婚して夫のカンボジア赴任が決まり、仕事を辞めてついて行ったんです。でも、経済的に頼らなければならない心苦しさや、仕事のブランクが今後どうなるのか、不安が募っていって…。そんな時、現地の図書館で何気なく読んだ社会学の本から、今私が体験していることは、多くの女性が経験してきたことの一つなんだと気付いたんです。
社会学なら、当事者として生涯関心を持って勉強し続けられる。そう思って、2020年4月に3年次編入で今の大学へ進みました。夫の実家がある大阪に住み、オンラインで講義を受けています。今は、主に介護関係のNPOを立ち上げた女性リーダーについて調査しています。
― 学び直しを実践できる人はまだ少ないですよね(※2)。
篠原 現状では、時間や経済的理由からハードルが高いと感じます。一度就職をしてから、「新たに学びたい」「専門性を身に付けたい」と考える人は結構いるんじゃないかと思います。国や企業の補助制度がもっと充実していくといいですね。私は奨学金を借りているのですが、学費も高いと感じます。
下津 確かに。若い世代や女性の賃金が十分ではないという課題も関係しそうです。何か購入する時も、地球環境や働く人の労働条件に配慮した企業の商品を選びたいと思うのに、正直、値段が高くて買えないことも…。サステナブル志向の若者は増えているのですが。
*****
※社会人が大学等において教育を受けている割合
OECDの平均 10.9%
日本 2.4%
― ジェンダーについて考えるきっかけとなる本やコンテンツはありますか?
下津 元アメリカ大統領夫人ミシェル・オバマの自伝『マイ・ストーリー』です。困難がある中でも「自分は自分」と貫く姿勢がかっこよくて、こうありたい女性像です。
『イラストで学ぶジェンダーのはなし』も、多様なセクシュアリティに配慮した言葉の選び方が学べて参考になります。
篠原 『女性の世界地図』がおすすめです。「仕事」「政治」「出産」「殺人」「難民」など、さまざまなテーマについて、女性の現状をデータや数値で見ることができます。日本の立ち位置を客観的に知り、驚きと再認識を与えてくれる本です。
あと、最近はSNSなどで性自認を公表し、困ったこと、傷ついたことなど実体験を拡散するセクシャルマイノリティの方も増えていますよね。性別適合手術の費用など細かい部分まで発信する人もいます。私は、スウェーデンで暮らす男性同士のカップル「ふたりぱぱ」のYouTubeをよく見ています。
下津 知っています!「みっつん」さんと「リカ」さんですよね。
篠原 そうそう。代理母出産で生まれた「息子くん」がいて。SNSをよく見る世代は、いろんな性、いろんな家族の形について自然と触れていますよね。
下津 SNSや動画などのツールをきっかけにすれば、家族ともジェンダーや社会課題について話し合えるんじゃないかな。そうすれば世代による考え方のギャップも、埋まっていきそう。
~おすすめコンテンツリスト~
『マイ・ストーリー』
ミシェル・オバマ /著 長尾 莉紗、柴田さとみ /訳 集英社 ・2019年
『イラストで学ぶジェンダーのはなし』
アイリス・ゴットリーブ /イラスト・文 野中 モモ /訳 フィルムアート社 ・2021年
『女性の世界地図』
ジョニー・シーガー /著 中澤 高志、大城 直樹、荒又 美陽 中川 秀一、三浦 尚子 /訳 明石書店 ・2020年
『ふたりぱぱ』
日本出身のみっつんさんとスウェーデン出身のリカさんが発信するYouTubeチャンネル(毎週金曜日更新)
― 財団やクレオ大阪について、若い世代にもっと知ってほしいと思っています。
篠原 クレオ大阪中央に来て思うのが、居場所づくりって大切だなということ。交流サロンでは、いつも中高生たちが自習をしたり、友達とお喋りしたり、心地よく過ごしていますよね。でも、その中にも、悩みがある子や、もっと交流を広げたいと考えている子もいるはず…。
セミナーなどの参加者の年齢層は高い印象ですが、思い切って10代限定の交流会を開いてみるのはどうでしょう。そこから相談事業やセミナー参加につながるかも。
下津 面白そう!今も実施していると思いますが、学校での出前授業ももっと増えるといいですよね。来てもらうのを待つというより、こちらからどんどんアプローチしていってほしい。若者の中には「男女共同参画センター」という存在に馴染みがない人が多いと思うので、まずは親しみを持ってもらうことから。
― インターン期間を終え、4月からの進路について教えてください。
下津 大阪府内の男女共同参画センターで働くことになりました。女性の地域防災への参加につながるような啓発イベントをやってみたいです。インターンシップを通じて、こんな風に自分も誰かの役に立てる仕事がしたい!という思いが強くなりました。
篠原 たくさんの人に出会うことで、視野が広がり、いろんな活躍の仕方があるとヒントを得られました。大学院に進んで勉強を続け、いずれは女性支援関連の仕事に就きたいです。
■つながる男性相談 第6回全国男性相談研修会
・鎧を脱ぎ「しんどさ」受け止めよう
福島 充人(一般社団法人日本男性相談フォーラム代表理事)
・男性に募る不安 支援や課題分析を
植田 晃博(笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ研究員)
・時代に応じたつながりを模索
髙橋 俊也(クレオ大阪中央館長)
濱田 智崇(京都橘大学健康科学部心理学科准教授)