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【財団ニュースvol.44】Think Gender~集う、つながる、未来へつなぐ㊦~

2022.03.23 PR

大阪市男女いきいき財団 vol.44㊦


Withコロナの生活も3年目。人との出会いが減り、新たな価値観に触れる機会は減っていませんか?
今だからこそ、集い、語り合う。そこでしか生まれないものが、きっとあります。


■いきいき財団インターンシップ生 若者の本音トーク!

・インターンシップ、何を学んだ?
・これからのキャリアの形
・2人のおすすめコンテンツ
・未来に向かって

■つながる男性相談 第6回全国男性相談研修会

・鎧を脱ぎ「しんどさ」受け止めよう
福島 充人(一般社団法人日本男性相談フォーラム代表理事)

・男性に募る不安 支援や課題分析を
植田 晃博(笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ研究員)

・時代に応じたつながりを模索
髙橋 俊也(クレオ大阪中央館長) 

濱田 智崇(京都橘大学健康科学部心理学科准教授)





つながる男性相談 第6回全国男性相談研修会


「第6回全国男性相談研修会」を2月27日、クレオ大阪中央で開催しました。
オンラインを含め、全国19都府県の男性相談担当者など63人が参加。事例の共有や情報交換を通じて、連携を深めました。「つながる男性相談」をテーマにしたシンポジウムでは、社会環境の変化の中で葛藤を抱える男性の支援について意見が交わされました。

 


鎧を脱ぎ「しんどさ」受け止めよう




福島 充人(一般社団法人日本男性相談フォーラム代表理事)

 

「リーダーシップを取るべき」「一家の大黒柱」。そんな「男らしさの鎧」を着て戦ってきたけれど、ちょっと重たくて邪魔になってきた。それが今の男性の内情ではないでしょうか。
 社会が男性に求めるものに応えてきた自負がある中で、応えられない苦しさは、大きな傷つきを伴い、暴力・暴言という間違った形として他者に向かってしまう危険性があります。

 ヒントとなるのが「ネガティブ・ケイパビリティ」。曖昧さや葛藤をそのまま抱えよう、という考え方です。「こうあるべき」は、自分自身だけでなく、他者も縛ってしまいます。人生ままならないのが普通。「できる状況」をめざせばめざすほど、現状が苦しく感じられてしまいます。「しんどい」という気持ちをまずは受け止められる社会になればいいですね。

 男性相談においても、不寛容・厳罰主義はマイナスしか生みません。たとえば、妻にきつく当たってしまった時、「なぜそんなことをした」と指導的な対応をすると、その場では反省するかもしれない。でも、反省する姿を見せることで「相談に行ったらこういう風に言えばいいのか」と狡猾な加害者を生み出す可能性も。せっかく相談したのに自分自身のしんどさを受け入れられない、何なら責められてしまうとなると、相談や支援から遠ざかってしまいます。

 誰かに頼ること、それが支援の第一歩。「しんどい時こそ自分を大切にしよう」と呼びかけたいです。男らしさの鎧を脱ぎ、傷ついた自分を癒したり、これまでの考え方をリフレーミング(違う視点で捉え、ポジティブに解釈する)したり、誰かとつながれたり…。これこそが今の男性相談で求められることではないでしょうか。


男性に募る不安 支援や課題分析を


植田 晃博(笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ研究員)

「(身長)170センチない方は『俺って人権ないんだ』って思いながら、生きていってください」。先日、女性ゲーマーが、男性への差別的な発言をしたとして、所属先のEスポーツチームから選手契約を解除されました。週刊誌などでも取り上げられた今回の騒動は男性優位の社会構造が揺らいでいる象徴的なできごとだと感じました。

 構造の変化要因のひとつが女性の社会進出。主に男性が担ってきた製造業が衰退する一方、家事の市場化やサービス部門の拡大で、女性のケア能力や対人関係能力の需要が増えました。
 男女の収入格差の深刻さに変わりはないものの、男性が大黒柱として一家を支える状況ではなくなってきています。
 しかし、男性の収入が伸び悩み、共働き世帯が増えても、男性が稼ぎ主でなければならないという意識はあまり変わっていません。稼ぎ主として家事や育児が免除される状況でもなくなっています。男性の不安や不満がどこに向かうのか。その一つの結果が、コロナ下でのDV相談件数の増加かもしれません。

 女性ゲーマーの騒動も、男性への差別が許されなくなったこと自体は良い傾向ですが、そう単純な問題ではなさそうです。男性の不満が溜まってきた表れで、ミソジニー(女性嫌悪)問題とも関連するのではないでしょうか。

 ジェンダー平等をめざす上で、相対的に優位な立場にあった男性の地位が低下していくのはある程度やむを得ないことでしょう。しかし、その過程で不満を募らせる男性を放置してしまうと、社会そのものが不安定化しかねません。

 そこで、男性政策を適切に進める必要がありますが、男性相談はその要。今後はより包括的な取り組みに期待します。
 たとえばDVの場合、加害者更生プログラムなど総合的な窓口としての機能を持つこと。また、男性の悩みを把握・分析し、男性政策を提言していくこと。日本男性相談フォーラムと共同運営するポータルサイト「オトココロネット」では、そうした機能を集約し、男性に気軽に利用してもらえる仕組みを作っていきたいです。


時代に応じたつながりを模索



髙橋 俊也(クレオ大阪中央館長)
 
料理や育児など日常的なテーマで男性向け事業を実施し、男性同士でのつながりを作ってきました。男性相談では、メール相談も検討したいです。文字情報は、受け取り方によって誤解を生む怖さもある一方、落ち込んだ時に励ましの言葉や有益な情報を読み返してもらえます。時代に応じたつながりの形を模索していきます。




濱田 智崇(京都橘大学健康科学部心理学科准教授)

相談をはじめ、男性向けの事業になかなか人が集まりづらいというのが全国共通の課題。とはいえ、地道に続けることでしか定着していかないと思います。指定管理業務などの場合、実績を求められるのは仕方ないですが、お守り替わりとして男性相談の存在は欠かせません。




 

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