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【財団ニュースvol.41】価値観をアップデートしよう

2021.03.17 REPORT

ジェンダー格差、見えていますか?

 新型コロナウイルスの感染拡大からはや1年が経ちます。社会全体が経済的な打撃を受けていますが、ここでもジェンダー格差があらわになりました。
 感染拡大前と比べ、収入が3割以上減った女性は、男性と比べて1.4倍(NHK、労働政策研究・研修機構調べ)。以前から指摘されていた構造的な問題も無視できません。就業する男性の非正規労働者の割合が22.8%なのに対し、女性は56%(令和2年版 男女共同参画白書より)となっています。

 
 家で過ごす時間の増加に比例し、家事や育児、介護の時間も増えます。その負担は平等でしょうか。家庭内での固定的な性別役割分担意識により、女性がより深刻な影響を受けたケースは少なくありません。

 新型コロナウイルスの影響を受ける生活は依然として続くでしょう。社会が転換点を迎えた今が変わるチャンスです。

 これからのライフスタイルを考える手掛かりに、今号では、「男らしさの社会学」などの著書がある多賀太さんのコラムをお届けします。ジェンダーギャップ解消に向けた、大阪市男女いきいき財団の取り組みも紹介します。
 一人一人が「当たり前」を見直し、価値観をアップデートした先に、誰もが暮らしやすい未来があります。




【vol.41】もくじ

【P2】コラム
コロナ禍を乗り越えてジェンダー・ダイバーシティの実現を/多賀 太さん (PDF版)

【P3~5】ぜひ知ってほしい!財団の取り組み (PDF版)

◆男性の育児参加を楽しく後押し!
①「イクメン」は身近なロールモデル - イクメン写真コンテスト -
料理動画で家事シェア応援 - 男のカンタン料理レシピコンテスト - 

◆オンラインでつながる、寄り添う
①LINE相談開始 若年層の利用促進 - 女の子のためのクレオ保険室 -
②こんな時だからこそ顔を合わせ 心交わして - ママとパパのオンラインカレッジ -


コロナ禍を乗り越えてジェンダー・ダイバーシティの実現を

コラム執筆者:多賀 太さん(関西大学教授)
専門は教育社会学、ジェンダー論、男性学。
男性の非暴力啓発運動に力を入れ、一般社団法人ホワイトリボンキャンペーン・ジャパン共同代表を務める。


 日本全体で見れば、コロナ禍の影響は女性により深刻な状況をもたらしています。

 2020年4月に最初の緊急事態宣言が発出されたとき、大幅に減少した就業者の数は、男性37万人に対して女性はその約2倍の70万人。同月の休業者数も、男性240万人に対して女性は約1.5倍の357万人でした。同年8月には、25~34歳女性の失業率が前月比で1.0%上昇して4.7%となり、年代別・男女別で最も高くなりました。外出自粛が求められる中、家庭におけるリスクも高まっており、4月から7月のDV相談件数は、前年の同月比較で約1.4~1.6倍になりました(内閣府男女共同参画局「コロナ下の女性への影響について」)。

 こうした困難を背景に、女性の自殺も急増しています。2020年7月から11月の自殺者数は、女性3,460人に対して男性6,106人と、数としては男性の方が多いものの、前年比では男性7.3%の増加に対して女性は37.1%も増加しており、10月に限れば女性は前年比で82.8%も増加しました(警察庁統計をもとに筆者算出)。

 これらは、コロナ禍によって新たに生じた問題というよりも、以前から存在していた問題がコロナ禍によって顕在化したものであり、その解決のためには、男女雇用機会の実質的均等化と、女性に対する暴力の撲滅への取り組みが不可欠です。


  しかし、コロナ禍は、こうした深刻な状況を生じさせたと同時に、男女双方のワーク・ライフ・バランス実現に向けた変化の可能性も開きました。

 これまで、多くの職場では、キャリアアップのためには職場に通勤して長時間働き、出張や転勤を厭わない働き方が求められてきましたが、育児をしながらそうした働き方を続けることはほぼ不可能です。その結果、多くの女性が、出産と同時に仕事を辞めたり、育児休業から復帰してもキャリアアップを断念したりしてきました。男性は男性で、稼ぎ手の役割を果たすためにはそうした働き方をせざるを得ず、十分に育児に参加することができませんでした。
 性別にかかわらず、子どもを持つ労働者が仕事の生産性を維持しながら育児との両立を図るためには、職業生活と家庭生活の間をもっと柔軟に行き来できるワークライフスタイルが求められます。コロナ禍に伴うリモートワークの拡大は、少なくとも一部の業態において、そうした新しい働き方の可能性を高めました。現に、6歳以下の子どもを持つ父親の約半数で、最初の緊急事態宣言期間に子育て時間が増加しています(明治安田生命「コロナ禍における子育て世帯への緊急アンケート」2020)。


 今後日本社会が持続的に発展していくためには、性別にかかわらず誰もが人権を尊重され、その個性と能力を十分に発揮できる、ジェンダー・ダイバーシティ社会の実現が求められます。コロナ禍の暗いトンネルを抜けたとき、何もかもが元に戻るのではなく、社会がそうしたポジティブな方向へ向かえるよう、私たち一人一人が、今から変化への一歩を踏み出していきましょう。


男性の育児・家事参加を楽しく後押し!

 「イクメン」という言葉が「新語・流行語」に選ばれてから10年が経ちます。言葉はすっかり浸透しましたが、実態はどうでしょうか。育休取得率を見ると、女性が83%なのに対し、男性は7.48%にとどまります(2019年度厚労省調査)。根強い性別役割分業への意識や、職場での理解を得にくい現状があります。
 大阪市男女いきいき財団は、この10年間、男性が育児や家事に取り組む姿を、冊子や動画などさまざまな媒体で発信してきました。「自分もやってみよう」「家族と家事シェアについて話してみよう」。楽しみながら考える、小さな種まきが、次の10年後、実を結ぶことを願って活動を続けています。


◆「イクメン」は身近なロールモデル - イクメン写真コンテスト -

 大阪市男女いきいき財団とクレオ大阪は、2010年から毎年「イクメン写真コンテスト」を実施しています。育児や家事を積極的に楽しむ男性の写真とエピソードを募り、これまでの応募総数は千点以上に及びます。
 毎年、一般投票で入賞作品を決定し、ホームページなどで発表。男性の身近なロールモデルとして紹介し、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気付きにつなげています。
 10周年を迎えた2020年度は、文科省事業を活用し、歴代の受賞作品32点を掲載したフォトブックを制作しました。市内の3ヶ月検診などで6千冊を配布し、家族や友人と育児について話すきっかけとなるツールとして活用を呼び掛けました。


完璧でなくていい 一歩ずつパパになろう

 「イクメン」の定義は、厚労省によると「子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性」。こう聞くと、ハードルが高いと感じ、自信をなくしてしまう男性もいるかもしれません。
 しかし、コンテストに応募したパパたちが取り組んでいるのは、何も特別なことではありません。料理や洗濯、子どもの入浴や寝かしつけ…。そこにあるのは、身の回りの家事に励むパパの日常です。子どもたちを慈しむ表情や笑顔が目立ちますが、時には疲れて眠りに落ちてしまう場面も。楽しさだけではなく、育児のリアルも垣間見えます。
 「完璧でなくてもいい。家族や地域で支え合いながら、一緒に一歩ずつ成長していこう」。応募作品が伝えるのは、男性たちをそっと後押しするメッセージです。失敗や苦労も含め、振り返ればかけがえのない日々。どれも、家族と過ごす時間の尊さを感じさせます。取り組みの意義は、コンテストの投票を通じて、あらゆる世代に届いています(下記コメント参照)。

 
~投票者からのコメント~

・子育て=女性が行うものという固定観念がなくなり、父親も子どもに対しての愛情がたくさんあると感じた。母親の負担を軽くすることができていてすごい。(10代女性)

・自分も父として元気や刺激をもらい、子育てを頑張ろうと思った。(30代男性)

・どのお父さんも、積極的に自分の仕事として子育てしているのが伝わった。(50代女性)

・細やかなところに幸福があると再認識した。こんな子育てをしたかったと思う場面もあった。(70代男性)

 

 性別を問わず育児 当たり前に

 一方、こんな意見も寄せられました。「『イクママ』という言葉がないように、いつか『イクメン』という言葉の役割が終わり、それが当たり前と認識される日が来てほしい」(40代女性)。
 最近の応募作の中には、幼い妹や弟の世話をする、次世代の頼もしい姿もあります。多様な働き方が認められ、協力し合える社会。それが私たちのめざすゴールです。


◆料理動画で家事シェア応援 - 男のカンタン料理レシピコンテスト -

 
 ステイホームで増えた在宅時間。男性の家事参画の促進や生活自立につなげようと、クレオ大阪のYouTubeチャンネルでは、男性が考えた簡単な料理レシピ動画を公開しています。
 2015~17年度に実施した「男のカンタン料理レシピコンテスト」(大阪市主催)の6つの受賞作品。考案者の男性も実際に登場し、家事シェアのアイデアや経験を伝えています。




オンラインでつながる、寄り添う

◆LINE相談開始 若年層の利用促進 - 女の子のためのクレオ保険室 -
 自粛生活の影響で、若い世代の望まない妊娠や性被害の増加が懸念されています。交友関係やからだの悩みの受け皿をつくろうと、2021年1月、クレオ大阪は10代の女性向けの相談事業「女の子のためのクレオ保健室」を始めました。

相談者と年齢が近い20、30代の助産師資格を持つ女性スタッフらが、公式LINEアカウントで相談に応じます。メッセージのやり取りを通じて、一人一人に寄り添います。必要に応じて、専門機関につなぎます。


 

 クレオ大阪は、これまで電話相談を中心に行ってきましたが、スマートフォンの普及を考慮し相談体制を拡充。昨年から女性相談で、メール相談を導入しました。時間や場所を選ばず、気軽に利用できることで、若年層の相談が増えています。保健室事業ではこうした経緯も踏まえ、10代が使い慣れたLINEを活用。相談の心理的ハードルを下げ、悩みが深刻化する前に早期解決につなげます。

 「悩みが複雑で、文章では伝えきれない」「もっとじっくり話を聞いてほしい」。コロナ禍でも、直接顔を合わせる安心感は変わりません。LINEに加え、クレオ大阪中央での来室相談も実施しています。明るい雰囲気の相談室を用意し、リラックスして話せる環境を整えています。気持ちや状況に合わせ、相談方法を使い分けてもらうことで、切れ目なく支援を続けます。

詳しくはこちら(クレオ大阪HP)


◆こんな時だからこそ顔を合わせ 心交わして - ママとパパのオンラインカレッジ -

 コロナ禍で一気に広がったのが、Zoomなどのオンライン会議ツールです。
 大阪市男女いきいき財団も、10月から3月まで、子育て世帯の学び直しやキャリアアップを支援するオンライン講座「ママとパパのオンラインカレッジ」(文科省受託事業)を実施しました。
 オンラインと対面を組み合わせ、マネープランニングやフィットネス、交流会など、多彩な講座を展開。10講座計19回で、約150人が参加しました。
 今回は、特に好評だったひとり親向けの講座についてご紹介します。



全国各地 自宅から気軽に受講 - 母子家庭のためのマネープランニング - 

 オンラインの利便性が発揮されたのが、「母子家庭のためのマネープランニング講座」です。
 小さな子どもがいて外出を控えている場合でも、自宅から受講できるとあって、関西だけでなく、東京や沖縄など全国各地のシングルマザーが受講。「女性とシングルマザーのお金の専門家®」として活動する浅井優花さんが、貯蓄や節約、最新の奨学金情報について、わかりやすく解説しました。
 コロナ禍で経済状況が悪化する中、家計の見直しや将来設計の不安に応えた浅井さん。「個別に質問できてためになった」「子どもの将来の可能性を狭めないためにも頑張ろう」。受講者からは、前向きな感想が寄せられました。



孤立しがちな男性の声受け止める - パパのお悩み相談サロン - 

 一方、父子家庭向け交流会「パパのお悩み相談サロン」は、感染防止対策を取りながら対面形式で実施しました。ファシリテーターの濱田智崇さん(京都橘大学准教授)と、離婚や死別を経験した男性らが対話しました。 
 サロンでは、互いを尊重し、話し出すまで無理せずに待ちます。参加者は落ち着いた雰囲気に安心した様子。「子どもに妻のことをどう伝えるべきか」「自分の趣味の時間に罪悪感を持ってしまう」。胸の内を言葉にして伝え、それぞれの悩みを分かち合いました。
 女性と比べて、男性は悩みを人に伝えられず、1人で抱え込む場合が少なくありません。心の機微を感じられる直接のコミュニケーションの機会が欠かせません。対面を避ける生活を強いられる中でも、人と人との関わりは、オンラインだけでは補えない大切な時間です。

 大阪市男女いきいき財団では、今後も感染防止に努めた事業運営を続けます。オンラインと対面をバランスよく取り入れ、それぞれの利点を活かした企画を実施していきます。


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