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【財団ニュースvol.45】ハイライト2021~一歩ずつ、前に進む。㊤~

2022.06.29 PR

大阪市男女いきいき財団ニュース vol.45㊤

コロナ禍の女性支援のその先へ ~SNS相談・生理用品配布の現場から~


「とにかく誰かに相談したかったんです」
「一人で抱え込んでいたことがやっと言えました。相談後、涙が止まりませんでした」
「何度も相談していいですか?ホッとできます」…。

 コロナ禍での女性のためのSNS相談での声です。


 以前なら、日々の会話や雑談の中で、友人や周囲の誰かにつらい気持ちや弱音をぽろりと吐き出せていたでしょう。外出自粛などで、そうした機会が減った影響は、想像以上に大きなことかもしれません。
 
 長引くコロナ禍の影響は、非正規雇用で働く女性に大きな打撃となりました。また、学校や保育園、介護施設などの休止により、家庭で過ごす子どもや高齢者のケアにかかる女性への負担が大きくなりました。
就労面でも生活面でも、女性に特に深刻な影響が及んでいます。

そうした中、国は緊急対応として、全国の自治体を通じて、女性支援事業(SNS相談窓口・つながりサポートの場の設置や生理用品の配布)を展開しました。
当財団も、大阪市、堺市、八尾市の事業を受託しました。

自治体 取り組み 実施年度 内容
大阪市 コロナ禍における
女性に対する
支援事業
2021、22年度 SNS相談、生理用品の提供
堺市 2021、22年度 SNS相談、生理用品の提供
八尾市 2021年度 ライフプラン相談、生理用品の提供





 


いずれの市の取り組みも、孤独・孤立、不安を抱える女性が、社会との絆・つながりを回復することをめざしています。
生理用品の配布だけに留まらず、配布をきっかけとして相談事業につなげるという仕組みです。

各事業を通じて見えてきた現状や課題をお伝えします。

必要な情報が届いていない… SNS相談で見えた課題


一人暮らしの方は、生活を維持するための仕事についての不安や悩み。
ひとり親の方は、経済的困窮も含めてこれからの生活への不安。
家族と暮らす方は、家族がいても話せない孤立感や孤独感…。
家族の有無にかかわらず多岐にわたる相談が寄せられました。
 
たとえば「大阪市女性のつながりサポートLINE相談」では、40代が35.2%と最も多く、10代から60代以上まで幅広い年齢層が利用しました。相談内容は、「こころ」が41.1%と最も多く、「生活不安」「仕事」「人間関係」の順に続きました。

SNS相談窓口は、厳しい社会情勢の中、仕事や家事、育児に介護と、生きていくのが精一杯という女性たちの拠りどころとしての役割を果たしたと言えます。誰にも言えなかったことを、勇気を出して打ち明けてくれたことを受け止め、不安や孤独感を軽減するサポートができたのではないかと考えています。

 一方で、コロナ禍でさまざまな支援制度が創設、拡充されてきました。
それらを含めた緊急援護資金、生活保護や助成金、奨学金などの制度。就職活動や職業訓練、専門相談などの情報。そうした制度や情報について、必要な人が知らないケースがとても多いことがわかりました。具体的な情報が届いていないのです。


各自治体はホームページなどで、そうした情報を発信していますが、当事者が自分からチェックをしない限りわかりません。ホームページを見ても、情報量が多く、探し方がわからないという声もありました。


困りごとをお聞きし、個々の状況に応じて適切な社会資源につなげる役割の大きさを改めて認識しました。

必要な情報が届いていない… SNS相談で見えた課題

「生理の貧困」 お金だけではない悩み



各自治体の男女共同参画センターなどでの生理用品の配布では、「仕事で来られない母親のために来た子ども」や「シングルマザーの娘のために来た母親」もいました。自分で取りに行きたくても行きにくい…。そうした事情がうかがえます。

「不安や悩みをどこに相談してよいか、相談しても良いことなのかわからずにいた」という女性が多いことも、スタッフらが配布する際の会話の中から見えてきました。
生理用品の入手に困っている人に提供するだけではなく、相談先につながっていなかった人をつなげる効果がありました。


「生理の貧困」はお金の問題だけに留まりません。
生理への偏見や無関心といった女性の健康をめぐる課題にも目を向ける必要もあります。

クレオ大阪中央で実施している「女の子のためのクレオ保健室」に寄せられた事例を紹介します。
10、20代女性の悩みにLINEで相談できる「女の子のためのクレオ保健室」。
からだに関する悩みや、友人や交際相手との悩みなどに、女性の助産師、カウンセラーといった相談員が対応しています。

10代の女性から「生理痛がしんどい。お母さんに言ってもたいしたことないと言われてしまう」という相談が寄せられました。婦人科の受診はもちろん、友だちにも相談したことはなく、市販の鎮痛剤を服用して何とかしのいでいました。生理に伴う体調不良や症状は個人差が大きいため、同性や親子間でも理解されくいことがあります。

また、隠すべきものだとする風潮も根強く、友だちとの会話でも、生理について話題にすることがためらわれ、知識が乏しいままの状態が続きます。その結果、偏見や無関心を引き起こし、当事者の悩みや困りごとが解決されていかないのです。


このように、経済的な理由だけでなく、どこにでもある家庭にも生理に対する知識の貧困に起因する「つらさ」が生じています。
生理は、決して経血が流れる日というだけの話ではありません。
1ヶ月ほどの周期を通じて、ホルモンバランスが変化することで、気分の落ち込みや、いらいら、肩こりや腰痛といった症状が起こります。そのために、学校や仕事を休まざるをえないというケースも少なくありません。

社会全体で、生理に関する理解を広める取り組みも求められています。

「生理の貧困」 お金だけではない悩み

With/Afterコロナのジェンダー平等に向けて



コロナ禍で女性を取り巻く状況はなぜ厳しいのでしょう。以前から指摘されていた固定的な性別役割分担意識に基づく構造的な問題が、目に見える形で表れてきたからです。

各自治体でも、支援の対応施策を継続し、当財団も引き続きSNS相談を担っています。

誰にも話せなかったことを受け止め、孤立感を軽減する。そうした拠りどころとしての役割だけではありません。
相談や支援につながっていない女性を相談や支援につなげるガイドの役割、そして、支援につながってからの伴走的サポートの役割をこれからも果たしていきます。

伴走的サポートのその先として、自己肯定感や自己効力感を高めるような取り組みにも力を入れていきたいです。
「生理の貧困」も今後の課題です。金銭的な貧困としてのみで捉えるのではなく、正しい知識の不足という健康面や、生理による外出控えなどの機会損失の面もあることが明らかになってきました。
まずは、大人が生理について口に出しても恥ずかしくないと思える社会と、その空気をつくっていくことが必要です。


女性の尊厳や社会活動の機会が失われることなく、生理に対する当たり前のニーズが満たされる社会。
行政、民間企業・団体と連携し、誰もが自分らしく活躍できる未来をめざして、私たちは歩んでいきます。

With/Afterコロナのジェンダー平等に向けて

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